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世界から女が消えた日
「女は我一人で充分だ」
魔王、それは理不尽の塊。
女勇者が破れ去り、世界に絶望が降り注がれた。
その絶望は、女に対してのみ効果をもたらした。
身体の組織が改編され、上半身の胸が失くなり、下半身からアレが生えてきた。
この日、世界から魔王を除く女が消え去った。
「女を取り戻したければ、我を倒すかダンジョンで手に入る性転換の秘薬を見つける事だな」
勇者ですら敵わなかった魔王に挑む者は現れず、変わりに挙ってダンジョンへと挑戦し出した。
そして数年の時が過ぎ、世界には僅かながら女が現れていた。
王族が莫大な報奨を約束し、性転換の秘薬を手にいれた者と女に戻った王女を結婚させ、子を産ませた。
結果、産まれてくる子は半分の確率で女だった。
世は女を取り戻せる可能性を秘めた、ダンジョンに挑む者達を『秘薬ハンター』と呼ぶ様になり、ダンジョンには何時しか『BL』が頭に付くようになった。
この日もダンジョン内で、新たな恋が生まれた。
「すまない、俺の為にこんな怪我を負わせてしまった」
「気にするな、お前が無事で何よりだ。それにポーションで治る程度の傷だ、ぐぁ」
「無理するな! ポーションなら俺のを使え」
「悪いな、手に力が入らない。飲ませてくれ」
「ああ、勿論だ」
「おい、何でお前が飲んでいるんだ?」
ポーションを取り出した男が、怪我を負った男に飲ませず自らが口に含み、口を近付ける。
「良いのか? お前には確か、変わってしまった彼女が居たんだろう?」
返答は口移しでポーションが飲まされ、傷が癒えた事で済まされた。
こうして、ダンジョンに挑む者同士が危険を共にして互いを認めあった先に恋が芽生えてしまい、元カノを捨て、今カレを作ってしまう事が続出してしまっていた。
ボーイズラブが世界に浸透した。
見捨てられた元カノ達は、ダンジョンに挑める程の力は失く、一人の男として生きていかなくてはならず、娼館に勤め始めたり新しい彼氏を見付けたりしていた。
元女だった者達は、解り易く額に紋章が描かれていた。改編時の副作用であった。
しかしその紋章を偽造して、詐欺行為を働く者も出始めたので、王族や貴族間では魔道具を使い、状態判別を行う様になったりもした。
元女の者は非力で地位が低くなったりしていたが、性転換の秘薬一度女に戻れたならば、立場は激変していた。
貴族に召し抱えられたり、果ては王子の結婚相手に選ばれて王族に連なったりと、玉の輿が起きた。
こうして世の中の一握りの女は、地位が格段に跳ね上がり、女に戻れた者が居る国は栄え、ダンジョンが近くにない国は衰退していった。
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