一、花咲かす君を捜して

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「よし。じゃあ決まりだな! 神楽おぼっちゃんに分からせてやろう。吉野さんがいないと寂しいってことに気づかせてやろう!」  吉野が少しだけ微笑んだような気がした。  碧斗は拝殿の扉を開ける。吹雪は続いている。それでも、行かなければならない。碧斗はまだ深世に会えていない。彼女に会うまでは、死ねない。  碧斗は吉野と手を繋いで雪の中へ向かっていく。吹き付ける風が体力を奪っていく。 「村の方向はあちらです。村に近づければ、この風雨はやみます」 「ありがとう」  吉野に示された方向へひたすら歩く。雪に足が埋もれて思うようには進まないが、確実に前進はしている。 「吉野さんは、大丈夫?」  吹雪の中、小袖だけでは寒そうだ。 「はい、私は平気です」  吉野は一瞬で狐の姿に変わる。赤毛のとても美しい狐だった。 「先導します。ついてきてください」  そうだった。彼女は狐だったのだ。碧斗は彼女の後を追う。やがて雪と風がやんだ。まだ黒い雲に覆われて薄暗いけれど、だいぶ歩きやすくなった。雪も浅くなる。 「もうすぐです」  遠目に集落が見えてきた。  ほっと安堵する。やっと深世に会える。  しかし、その時だった。雪つぶてが、碧斗の背中に当たる。  振り向くと、神楽がこちらを睨みつけて立っていた。
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