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序、
『結婚するので実家に帰ります。今までありがとう。楽しかった』
殺陣稽古の休憩中、メールを受け取った天沢碧斗は首からかけたスポーツタオルで汗をぬぐいつつ、首をひねる。
(俺たちって付き合ってたんだよな?)
あれ、違うんだっけ。
碧斗はさらに考える。結婚というのは、普通、お付き合いをしていた人とするものではなかったか。
「……ちょっと何言っているのか分かんない」
どっきりだろうか。いや、待て。まだ駆け出しの役者である自分にどっきりを仕掛けて誰が喜ぶというのか。もしいるなら相当の暇人か悪趣味か、いずれにせよやばい奴である。
とりあえず理由を聞きたい。碧斗は彼女に電話をかけるも、『現在使われておりません』というアナウンスが鳴る。メールも宛先不明で返ってくる。
「……幻だったのかな」
碧斗は遠い目をしてつぶやいた。
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