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天使か悪魔か
天使は否定しなかった。ただ、じっと前を見据えて死神の声など聞こえない顔をして立っている。
死神はすいと天使から離れて彼を真顔で見つめた。
(ああ、冴えざえとしてやがる。天使には見放されたくないもんだな、健祐さんよ)
天使とはそうそう会わない。久しぶりにあったのだから少しくらい仮を返してもらってもいいだろう。
「ご報告までに・・・・・・。優しい天使様のお陰で、自殺した少年は怒りと恨みに飲まれて地獄に堕ちたよ」
ぎりっと手を握りしめて天使は沈黙し続ける。その心に黒い筋が入るのを見て死神はにやりと笑った。
「いいですよ、尻拭いをして差し上げます。この漆黒の羽は天使様達の汚れを我々が拭ってきた証」
意地悪な笑い声と天使を残して死神は姿を消した。
自分の死について語られることに気付きもしないで健祐は歩いている。
(なんか面白くなってきたな。あいつを呼び出して面白い話をしてやろう、もちろんお代はあいつ持ちで)
もし断ったらどうしてやろうかと健祐は意地悪な笑みを漏らしながら歩く。命乞いをする顔を想像すると顔が緩んでしかたない。
健祐の体にまとわりつく黒いものが厚みを増していく。その様子を見ながら落ち着きなくそわそわと心配するばかりの守護霊がいた。
□□□ 終わり □□□
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