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死者のリスト
自分の直ぐ側で異界の者達のいざこざが起こっているとは思いもしない健祐は、スマホを取りに会社へと向かって再び歩き始めていた。
「あっ、こらチビ! ノートを返せ!」
天使がひらりと手を揺らしただけで、守護霊から死神へふわりとノートが戻っていった。
「死者のリスト。変更があったとは聞いていません」
「あの守護霊は名前を見た」
「死神が現れる時には名前が光る。・・・・・・と、彼は知らないだけです。人は皆死ぬのですから必ず名前があるのは当たり前のこと」
チッと小さく舌打ちをして、死神が天使に苦い顔を向けた。
「食えないな」
「天使を食べる趣味が?」
「ねぇよ」
2人で目を合わせて笑う。
もう何百年こうして腹の探りあいをしてきたことか。もう情が湧いてきてもおかしくないくらいに会話をしてきた。
「どうしてくれるんだ? 地獄への招待、後1人で100人だった。俺は階級が上がるところだったんだぞ」
ため息混じりの死神に天使がニヤリと笑う。
「貴方ほどの方なら焦らなくても直ぐに達成できますよ」
「褒めて伸ばそうとは。流石、天使様」
褒め返しする死神は天使を見もしない。その目は遠ざかる健祐の背を追っていた。そんな死神の様子を天使は見つめる。
「しかし、解せませんね。死ぬ時でなければ死神といえども連れていけないはずなんですけどねぇ・・・・・・」
遠ざかる健祐の背を睨みながら死神が答える。
「あの人間は重い罪を持っている」
「知っています」
「昔の罪の記憶に蓋をして・・・・・・、暗い心へUターンしかかってる」
彼らの瞳には見えている。
健祐の体の回りを蛇のようにうねうねとした黒いものが這い回っているのが。
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