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心の闇と鎌
死神の話に耳を傾けていた天使がしばらくして口を開く。
「いじめ・・・ですか。キザハシは感じています」
「天使様はお優しい」
皮肉を込めた死神の言葉に天使が眉間にしわを寄せる。
「暴言に暴行、器物破損に恐喝などなどなど・・・それらを虐めで括りますか」
苦い顔をする天使を死神は面白がっているようだった。
「そして、自殺に追い込んでおきながら、遊んでた死ぬとは思っていなかったとさらっと言い逃れする人間。あんた達のお優しい心が次の死人を作る」
牙を剥きそうな表情で死神がそう言った。
「汚れた人間の受け入れは先延ばししたいか?」
天使は黙ったまま横睨みした。
「しかし、寿命のある者を勝手に連れて行くのは世の理に逆らうこと」
「あの男が全うそうな人間からあくどい人間へUターンした途端、名前が光ることになってる」
勝ち誇った顔の死神に天使が冷たい視線を投げる。
「これは完全にフライングです」
「怪我をさせて入院でもしたら頭を冷やす機会になるかと思ってね」
死神のその表情からそうではないことは直ぐに分かった。
(大怪我を負わして死を待とうと言うことだったに違いない)
天使は冷ややかな目を死神に投げる。しかし、深く踏み込むことはしなかった。
「天使様も人が悪い」
くっくっと笑いながら死神が天使の耳元に口を寄せる。
「あの男の心が暗黒に引き返したら守護霊も手が出せなくなる。そ・し・た・ら・・・・・・」
死神が声を潜ませて笑う。
「俺達の鎌が首に掛かりやすくなる。 ーーーそれを待ってるのかな?」
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