55人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「それじゃあ森の探索を始めるわけだが、あんた、基本的に俺の傍を離れるなよ」
辿り着いた森の入口でそう言った男に、少女がぷくりと頬を膨らませる。
「もー、判ってますって。昨日から何度も聞きましたよ、それ」
心外ですと言いたげなその様子に、本当だろうなと男は念を押すように言った。
それにますますむくれてみせた少女は、唇を尖らせながら、ぴっと男を指さす。
「ハンターさんは、私のことを子供扱いし過ぎです。この見た目ですから、人の目があるときは寧ろそうして貰った方が良いですけど、今みたいに他に誰もいないときは子ども扱いする必要ないじゃないですか」
「相応の対応をしていると思うがな」
「そんなことありませんよー! 何度も言ってますけど、私はハンターさんよりもずっとお姉さんなんですからねっ」
「俺もそいつは何度も聞いたなあ」
何度も聞いたし、理解もしているのだが、どうにも年上とは思えないんだよなぁ、とは男の胸中の呟きである。彼女が人並外れた力を持っていることも、見た目通りの人間の子供にしては持ち合わせている知識が規格外なことも、十分身に染みて判っているのだが、だからといって年上っぽさが感じられるかというと、そんなことは全くないのだ。
「あんたが俺よりも年食ってるってことは判ってるし、見た目がガキだから侮ってるなんてこともねぇし、あんたの能力についても信用してる。つーか、そうじゃなけりゃこうして仕事に連れてくなんてしねぇよ」
「本当ですか?」
「こんなことで嘘ついてどうするんだ」
まっすぐ少女を見下ろす男の顔はごく真面目で、その言葉は違わず本心である。それが判ったのか、少女は満更でもなさそうな様子で、それなら良いですけど、と言った。
最初のコメントを投稿しよう!