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「どうしたの、あっちゃん、そんなに見つめられたら、私……」  いい空気を感じて理子が言いかけたときに、呼び鈴が鳴った。なぜか彰人もハナもビクッと目に見えて身を震わせた。 「どうしたの? 出ないの?」  呼び鈴にムードの邪魔をされたことにやや不満を持ちながらも、なぜか固まって動こうとしない彰人の横をすり抜けてドアに手を掛ける理子。 「だめだ! りこちゃん、開けちゃ……!」 「え?」  時すでに遅し。理子はドアを開けていた――! 「こんにちは」  そこには老人がいた。彰人はほっとしたあまり腰が抜けそうになった。 「おかあさんを見なかったかね?」 「はあ」  理子の髪型はロングのゆるパーマ、茶髪。なので、「おかあさん」には思われなかったようだ。 「おとうさん」  優しい声がして、かわいらしいおばあさんが後ろから顔を出した。  ふと、ハナは気がつく。このおじいちゃん、どこか管理人のヒロさんに似ている。ラクダのような、優しい目が。  彰人は心底ほっとしてようやくドアに近づいた。501の殺人鬼が来たとばかり思いこんでいたのは言うまでもない。  この人たちは、勇さんと節子さんのご夫婦だ。たまに見かけたことがあった。  そういえば、同じ階なのにまだごあいさつに行っていなかったことに、ようやく彰人は思い当たった。 Sassyさま『アルファ・ビルヂング[前編]』より https://estar.jp/novels/25948270
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