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 ハナは極めて神妙な、いや哲学的とさえいえる顔で、そこに鎮座する。  じっと見つめる彰人の目からそっとその大きな瞳をそらす。体全体がふるふると震える。  シッポを八の字型に上に上げる。  彰人がうれしそうに近寄って、ハナの出したものを割りばしでつまんだ。 「やったー。今日も快腸、元気なうんこだ。よかったよかった、健康だね、ハナ」  心からの笑顔はどんな女性のハートもいちころにしてしまうに違いない。ハナは思う。『うれしいなぁ、今日も彰人がこんなによろこんでくれたわ』。  彰人はいそいそとそれをつまんで、消臭機能つきの袋に入れて口を閉めた。 「ハナが元気でここにいてくれたら、あとは何も要らない」  それを聞くと、ハナはうれしいのと同時に複雑な気持ちになるのだった。  
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