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一方、ハナはつぶらな黒い瞳でヒロさんと芹くんを見上げ尾っぽを振っているコウタロウの中に、何か違和感を抱いていた。
この間公園で会ったときは、はじめて犬を見て怖くなってしまったが、今はとても賢くてきれいな犬に見える。
けれど、何か不思議な声が聞こえるのだった。
『家臣其の一、最近はご満悦だからな、家臣其の二もずいぶん丸くなったもんだ。とげとげ少年だったというのに』
『?』
ハナは不思議な気分だったが、ふいとコウタロウがハナを見た。
『この猫はうまく人間を飼いならしているようじゃの』
え、うそ。それって私のこと? 私が彰人を「飼いならしている」? そんなつもりは……。
『猫は唯一人間を飼いならすことのできた動物だ、とははて、誰の言葉だったか? 偉い歴史上の有名人だが、ふっふ、犬も負けてはおらん』
『コウタロウさん、私、そんなつもりはないのよ。彰人が大好きなだけで』
『人間は自ら望んで猫のしもべになる』
ハナはもう少しこの賢い犬さんと話がしたかったが、彰人は「ぜひ、深大寺そばを皆さんでお召し上がりください!」と言っておいとましてしまった。
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