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さて、残るは禁断の部屋・501号室である。
彰人とハナは、チョコレート型のドアが少しだけ開いていることに気づいた。さっき通ったときは閉まっていたはずだった。
「あれ、今帰宅したところなのかな……と、ハナ!」
ハナは彰人の腕から飛び出し、その狭いすき間から501号室の中に飛びこんでいってしまった。彰人は慌てて、ドアを開けてハナを追いかける。
そこで彰人とハナが目にしたものは――!
正面にある猫足の美しいアンティーク調のテーブルの上に、グラスに注いだ「青汁」が置かれていた。その傍らには、ガラス製のポットに青汁がたっぷりと残っている!
その青汁は何かを訴えるかのような悲しみと悔しさを放っている。かすかにきゅうりの匂いがする。
部屋の中には美しい紫陽花の花があちこちに生けてあった。それなのに、部屋全体が何かまがまがしい妖気を漂わせ、かつバスのほうから奇妙な生臭い臭いがするのだった。
「な、なんだ? これは」
さすがの彰人も青ざめている。
そこに、ふいに1人の背の高い青年が現れた。彼は、右手にタロットカードを1枚、左手に鋭利な柄付きナイフを持っている。しかも、薄紫色の極めて豪奢な着物を着ているのであった。
一見好青年風の顔つきをしたその男は、「ようこそ、西岡くん。待っていたよ」と親し気に言うが早いか、ふふふ、と笑って柄付きナイフをおもむろに構え、彰人に向けて真っすぐに放った! それは極めて正確な狙いを定めたもので、彰人の喉元を貫く位置を狙っていた。
驚きのあまり動けない彰人。
しかし、矢のような影があたかも弾丸のようにジャンプして、そのナイフの柄をとった!
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