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 ハナの類まれなるハンターの素質が発揮された。  素早くジャンプしたハナは、その口にナイフの柄を加え、音もなく着地すると、ナイフを咥えたまま男に対峙した。男は明らかに動揺している。あたかもこのナイフが目標を外すことなど、いやその飛翔を妨害されることなど考えたこともないかのようだった。  しかも猫科特有のしなやかで美しい跳躍によって……!  さすがに彰人はぞわりとし、男に対峙するするハナを急いで抱き上げ、深大寺そばの入った紙袋を床に落としたまま、走って部屋を逃げ出した。  腕の中のハナは、興奮のあまり激しく震え、その眼はらんらんと輝いていた。  実は彰人とハナを心配したトラは、この部屋にあらかじめ忍び込んでいた。そこでテーブルの上の「青汁」と、奇妙な臭いに気づき、その意味を察知したトラは、いざとなったら自分が盾になるつもりでいた。  しかし、トラの予想をも上回るハナの敏捷な跳躍、正確な「獲物」のキャッチに、トラはすっかり度肝を抜かれていた。  『ハナ、思っていた以上だ』  薄笑いを浮かべてナイフを拾い上げた男の目を盗んで、トラは自分もドアの隙間から廊下へ出た。ただ無言で置かれている「青汁」に何ともいいようのない憐憫の視線を向けながら。  男はドアを閉めると、再びバスルームの方に向かった。 猫とろさま『僕とくーちゃん』より。 https://estar.jp/novels/25956500
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