プロローグ1『独りぼっちのオレ 話しかけてくれたキミ』

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

プロローグ1『独りぼっちのオレ 話しかけてくれたキミ』

 みんなも同じかもしれないが  オレはほろ苦い想いを  経験し続けてきた。  特に…  飛んできたカラスが  カーッと鳴いたのが  怖くて泣いたり…  話しかけてきてくれた  同い年くらいの男の子に  なんて返事すればいいのかわからなくて  逃げ出してしまい困らせてしまったり…  …していたあのときのオレは  泣いて誰かに抱きつくことばかり。 ミノリ「ねぇ母さん、     保育園なんてとこ     行きたくないよぉ…」  母さんのそばに駆け寄って、 ミノリ「みんなと仲良しできないよ…     かあさんいないとさみしいよ…」 エミ 「ずっとワタシがアナタを     見ておくなんてできないから…     そのお手伝いお願い!」 ミノリ「え〜っ!そんなの…     イヤだよぉ…」  納得がいかなくなる度に  ひたすら涙を流していた。 エミ 「ミノリったら…     いつも弱虫なんだからぁ…」  家族の内外問わず  よくそう言われていた。  そんなふうに日々を過ごしてきたオレは  保育園でいつも独りぼっちだった。 ミノリ「ぶ〜ん……     ぶ〜ん ……」  車のおもちゃを  ひとりで動かして遊び、  みんなが友達同士でする  お遊戯の時間も…   わーいっ!!… ねぇねぇ!!…   よっしゃーっ!!…  話しかけたり話しかけられたり  することがこわくて…  誰にも声をかけれなくて  先生とペアになることが多かった。 ミノリ「ぶ〜ん……」  いつもそうやって過ごしていたため  不思議に思われることもなく  独りぼっちということに  苦しさも寂しさも感じていなかった。  そんな気弱なオレの肩に手をやって  優しく話しかけてきてくれた  初めての同い年がスズメだった。 スズメ「ねー!ミノリくん。     友達になろ。」 ミノリ「と…友達?」  スズメにはその時には  いつも一緒に遊んでいる友達がいた。  オレには誰ひとり  友達といえる人が  その時はいなかった。  というかその時のオレは  "ともだち"の言葉すら知らなくて… ミノリ「ともだち…になる?いいの?」 スズメ「うん!」 ミノリ「えっ…なんだろっ     ありがと!」  スズメとの出会いと  スズメと友達になれたことが  そのころのオレからすれば…  夢のようにも思えて  恥ずかしくも思える  幸せな出来事だった。 スズメ「アタシ、スズメ!     よろしくね!」 ミノリ「あっ…うん…     …っよろしく?」  スズメはそう言ってすぐに  オレのことについて尋ねてきた。 スズメ「ミノリくん、     どーしてみんなと     話さないの?」 ミノリ「ゆったらどーなるか…     こわくて…     カラスさんも怖いし…」 スズメ「カラスさん怖いの?     そーなんだ。大丈夫だよ。     何かあったら言ってね!」  それからずっとスズメは  友達なんて言葉が何だかわからない  みんなと打ち解けることができない  オレに対して  優しく見守ってくれたり  優しく話しかけてくれたりして  支えてくれるようになった。  ほろ苦い未熟な果実が  甘酸っぱい熟した果実へと  成長していくときのように  ほろ苦い経験をしてきたことが  甘酸っぱい経験に繋がった。  人生はこのような  ほろ苦い思いと  甘酸っぱい思いの連続だ。  小学校の入学式になっても  スズメ以外の人に対して  あまり打ち解ける事ができなくて…  「独りぼっちという弱みを消したい」  「みんなに頼られてみたい」と考えた。  一つの手段として一つの夢を持った。 ミノリ「テストでいっぱい100点取って     みんなの力になれて     みんなに頼られる     そんな人になりたい。」 スズメ「それっいいじゃん!」 ミノリ「オレ頑張るよ!」 スズメ「うんっ!」  その結果…  オレは小学校を難なく卒業し  中学では成績トップ、 隣住民「ミノリくん。     たくましくなったわねぇ〜     モテモテの好青年じゃないのぉ」 エミ 「そ…そうですか?」 隣人 「うん。まえ別人かと     勘違いしたくらいだよぉ。     やっぱりアレはミノリくん     だったのねぇ。」 エミ 「そんなことないでしょ~     ホントに別人だったんじゃ…     ってそんなこと言っても     親としては嬉しいんですけどね。」  小さい頃に迷惑をかけた  同い年の男の子の親戚の  近所に住んでいるおばさんも  そう見直すほどに エミ「ミノリも毎日一緒にいると    気づきづらいけど    日々成長しているのね。」  弱虫だと言われまくる人  ではなくなった。  そして年月が経ち  桜が舞い散る季節となった。  オレは中学校を卒業し  新たなる一歩を踏み出そうとしていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!