第三章第一節『想い伝えたい 作り届けたい』

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第三章第一節『想い伝えたい 作り届けたい』

ユウハ「いつもオマエんちばっかで     ごめんな!」 ミノリ「オレの家でいいなら     別にどうってことないよ。」  オレは自分の家で  ナオトとユウハと一緒に遊ぶことが  土曜日の恒例行事になっていた。 ナオト「なあ!これやろうぜ!」 ミノリ「あっ…うん。」  今週はオレの家にあった  テレビゲームをすることになった。 ナオト「このゲーム、月に何回してんだ?」 ミノリ「親の使ってたお古だから     そこまで使ってないよ。」 ナオト「え〜っ!もったいねぇ〜!     けどっミノリらしいや。」 ナオト「オマエ、どのキャラにするんだ?」 ミノリ「え〜っとぉ…」  その時もオレの頭の中は  二人のことやゲームのことでなく  モモネのことでいっぱいだった。  モモネってホントかわいいよな…  早く好きって伝えたいな… ミノリ『そういえばナオト、     モモネの誕生日って     いつなんだっけ?』  何気なく聞いた  モモネについての質問の… ナオト『急に何だよ?     モモネの誕生日か?     明日だよっ』 ミノリ「アッ明日ぁ!?」  明日だよっ…  その答えに驚き手を滑らせ  コントローラーを落としそうになるわ  操作をミスるわで... ナオト「うわぁ〜っ!」 ミノリ「あっ…!」  ゲームオーバー... ナオト「何してんだよミノリぃ」 ミノリ「ごめん…でもっえっ!?…     ホントに!?モモネ明日なの!?」  ナオトは自分のスマホを手に取り  モモネのサイトのプロフィールの  誕生日欄をオレに見せた。 ナオト「スカセレのサイトにも     載ってるぜ、ほらぁっ!」 ミノリ「た…確かに…     そ…そうなんだ…」 ナオト「やりなおすぞっ!」  モモネとの恋を悟られないように…  なんでっと怪しまれないように…  数回ゲームを繰り返してから ミノリ「やべっ、     親が帰ってくる時間だ。     今日はごめんだけど     帰ってくれねぇかな。」  と言ってみたのだが… ふたり「え?もう?」   今日のミノリ、ちょっと変だな。   いつもと違う…でもまあ、   家族と過ごしたいって言ってたし、   きっと何かあるんだろうな。 ミノリ「う...うん...。」   ナオトには悪いけど、   今はモモネのことしか頭にないんだ… ナオト「いつも家族が帰ってきても     一緒にいさせてくれるのに     今日はどうしたの?」 ミノリ「あっ…いゃ…何でもないけど…     今日は家族とゆったり     過ごしたい気分なんだぁ」  冗談バレバレだって感じながら  言ったのにもかかわらず ナオト「へぇ〜…     ミノリって反抗期来ないタイプか?     家族と一緒にいたいって     それすごくいいね。」 ユウハ「わかったよ、     家族仲いいね!また明日な!!」  冗談が下手だったのか  自分が自分で持った感触とは正反対に  良いこととして捉えられてしまった。 ミノリ「え!?…あ〜っ…うん。」  何も疑わずにすんなりと  受け入れてくれた二人を  びっくりもしながら玄関で見送った。  ナオトらが帰って扉がしまったあと、  オレはモモネにクッキーを  プレゼントすることを決めた。  キッチンに立って準備をした。  料理すること自体は  どうってことないことだった。  ナオトとユウハに  クリスマスケーキを一人で作って  振る舞ったことだってあるオレは… ミノリ「ケーキも一人で作れたんだし     クッキーも一人でできる!」  そう思っていたのだが  いざ始めてみると  モモネ、どんな顔をしてくれるかな?  国民的美少女だし他の人からも  もらうんだろうな。  下手だとか失敗してるだとか  思われるのかな?  そう考えてしまい... ミノリ「オレの作ったクッキー…     国民的美少女のモモネに     美味しいって言われたいけど…」    「そんなやつ     オレつくれるかな…」  そう思い手が震えて   ブル…ブルブル… ミノリ「焦がしちゃったらどうしよう…     明日渡さないといけないし…」 ミノリ「変な失敗しても     やり直しなんてできないよなぁ…」   ブル…ブルブル…  でも、これは俺の気持ちの証。  なんとか頑張らないと。  そう自分に言い聞かせながら  クッキーづくりを進めた。  クッキーを作り終えてから  クッキーの説明も含めたものとして  ラブレターを書こうとしたが、   ガタ…ガタガタ… ミノリ「なんて言葉で伝えれば     いいんだろう、この気持ち…」  かっこいい言葉にしようと思ったり  本当の気持ちを書けてないかもと  書き直したり考えたりしていると  不安な気持ちになって手が震えた。 ミノリ「"好きです"って言葉だけじゃ、     足りないしなんだか     さみしい気がする。」    「だからと言ってこうでもないし…     こうでもない…     一言は決めないと…」   ガタ…ガタガタ… ミノリ「もっと何か、     彼女に伝えたいことがある気が…     だけどどうしても     うまく言葉にならない…」   恋愛という段階までに   踏み出したことがないオレにとって   ラブレターを書くことは初めてだった。 ミノリ「でも、     これが俺の正直な気持ちだって、     ちゃんと伝わるといいな。」 ミノリ「よっし…これでぇ…     いいはず…オッケー!」  困難をのりこえ完成させた  クッキーとレターを入れたお菓子袋に  折り目をつけてプレゼントが完成した。  そしてモモネの誕生日に  オレは勇気を出してプレゼントを渡した。                 第二節》
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