preEPナオト編『モテと崖 2人の悔やみ』

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preEPナオト編『モテと崖 2人の悔やみ』

〜1.成績トップと崖っぷち〜  オレはナオト。  なぜか友だちになれたミノリに  とある疑いをかけたほうがいいと  最近思い始めている。それは…   成績優秀者やモテ男は   オレ達に話しかけてくれるだけで   眼中に入れてはいないのだろう。  という疑いだ。  その考えが確信に変わったのは  ミノリが… 同級生「ミノリくん…     ワタシ高校違うけど     ずっと応援してるからね!」 ミノリ「ありがとう。」  小学校を卒業し中学の卒業式も終えて  高校生としての日々に期待を持って ミノリ「もう中学卒業かぁ…     あっという間だなぁ。     いろんな女子にモテてきたし     付き合って来たし…」  中学校の校庭で独りで話して… ミノリ「成績も申し分なしだし     モテてるオレ…ホントに最高!」  勉強も友情も恋も充実していたため  フワフワと気持ちが浮かれてしまって… ミノリ『そんなオレだけど     中学入った頃の目標は     恋愛を楽しむだったのに     告ることすらしてないなぁ…』 ミノリ『あ〜あっ…なんで告らずに     ここまで来ちゃったかなぁ!!』  そんなことを盛大に言い放ったからだ。 ナオト「何独り(ごと)()ってんの!?」 ナオト「ボロボロのオレがいるのに     モテモテの成績トップが     そんなことを大声で言うなよ…」 ミノリ「あ…」 ミノリ「ナオト!!居たの?     気づかなかった、ごめん。」  もっと重症の人が友達にいることを忘れて  思うがままに言葉を発していたミノリ。 ナオト「そんなの聞いてたら     オレはそれよりも下の     もっと下なんだって…」    「そんなふうに考えてしまって     悲しくも苦しくもなるからさ…」  ミノリが弱虫なんて  思ったことも聞いたこともない。  だからオレは… ナオト「50点すらもフツーに採れないオレ、     オマエにとっちゃ眼中にないだろ。」 ミノリ「なんでそんなことを?」  恋愛も勉強もできるミノリを  恋愛も勉強もできてない自分と比べ… ナオト「話をそらすなよ!     勉強面だけじゃなく     恋愛面でもか…」    「だってオマエは     スタートラインすぐそこの     超絶イケメン美男子だしな。」    「崖っぷちで恋なんて程遠いオレは     到底オマエの眼中に及ばねえよ。」 〜2.チョコの銀紙 ナオトの思い出〜  そう言うと… ミノリ「スタートラインすぐそこ!?     そんなことないよ。     超絶とかやめてよ…」  …とミノリが言ったから…  イケメンと美男子は否定しないんだ…  やっぱ眼中に見てない人なんだ!  そう頭に言い聞かせながら  ミノリのカバンを見たら  2枚の銀紙があった。   オレは銀紙が見えた瞬間   それじゃあ一体これは何なんだ?  という代わりに  ミノリの方に目をやった。 ミノリ「あっ…それは…その…     いつも…というか…」  女友達にひとつもらい  一つずつ一緒に食べたお菓子の銀紙が  捨てずにカバンに残っていたのだ。 ナオト「またもらったのかよっ…     いいよなぁミノリわぁ〜…」    「ってか…これのどこが     恋始まってないんだよぉ…     オマエが言い出してない。     それだけじゃん!」  女子からモテモテのミノリ…  女友達ゼロのオレ…  眼中に入ってないかの  事情聴取をしようとしていたオレだが…  その気も失せ始めてただひたすら  ミノリに対する疑念を膨らませた。  ミノリはオレの何倍生きてんだ?  どうやったらオレは  ミノリみたいになれるんだ? ナオト「チョコすら一つも     もらえたことないオレなんか…     オレには女の子なんか……」    「あぁっ…     自分で自分が     情けなく思えるっ…」  そんなことを言った。 ミノリ「ナオト…」  最近ナオトが自信をなくしていると  言葉にせずとも気づいていたミノリは  優しく思っていることを伝えてくれた。 ミノリ「そんなことないよ。     最近そんなことばっか     言ってんなぁ。」    「中学のときは勉強も恋も     どうでもいいやって     感じだったのに…」 ナオト「勉強も恋もできないオレ     下にバカにされるのが     時間の問題だなってさ…」 ミノリ「そう思ってるんだぁ…」  中学で赤点ばかりを取り続けたオレ…  驚かれバカにされ続けてきたオレ…  を思い浮かべたのかミノリは  すんなりそうだなとは言わなかった。 ミノリ「でもこれまでもぉっ…」 ミノリ「あっ!ダメだそれ言ったら…     オレも高校で挽回するんだし。     ナオト頑張ろうな!」  ミノリはオレの言葉が  ただの妬みではないとわかってくれた。 〜3.勉強と恋愛 ミノリとナオト〜 ミノリ「勉強うまくいってんのに     恋愛が思うようにいかない     ってときはあるし…」        「恋愛すすんできてんのに     勉強が思うようにいかない     ってときだってある。」        「あれできるからこれできるとかの     イコールで結べることでもないし     オレにとっても難しいよ。」 ナオト「こんなオレでも     勉強も恋愛も…     できるようになるって?」 ミノリ「なるとは言えないけどなっ。」 ナオト「なんだよぉ…」 ミノリ「オレだって最初っから     天才とかそんなもんじゃないし。     難しいものは難しいし。」  そう聞いたとき崖っぷち人間として  思ったことがあった。 ナオト「そうなのか?…」    「何回も生まれ変わってとかで     オレが全てだ!…」     「…みたいなのじゃねえのかよ。」 ミノリ「それは違う…     ナオトにはオレが     どう見えてんだ?」  それからミノリは  これまでの経験からか何かわからないが  何かをもとに質問にこう答えてくれた。 ミノリ「大丈夫、     成績得点だけが     全てじゃないし…」 ミノリ「両方一気に頑張るのは難しいよ。     オレにはナオトにないものがある。     ナオトもオレにないものがあるよ。」    「赤点ばかりだって考えたらあれだけど、     自分のやりたいことにまっすぐで     面白い話いっぱいできるじゃん。」    「みんなオマエにあるもの     注目してると思うよ。」 ナオト「ホントにぃ?そうなのぉ?」  ミノリの話を聞いて気持ちを戻して  顔をあげ真ん前を見かけたオレ。  なのにミノリは間違って  言葉をさらに付け加えてしまった。 ミノリ「それに…知ってるか     百野花高校の赤点…」 ナオト「20点だろ…知ってるよ。」 ミノリ「どんな人も共に     勉学に取り組める環境を目指した     進学優位の高校としては珍しい     百野花高校ならではの特徴。」    「平均点とかで変動もしないんだよ。     オマエでも大丈夫だよ。     …。保証はできないけど…」 ナオト「ホントにゆってる?     20点は取れるって?オレが?     ミノリにはオレが     どう見えてんだ?…ww」 ミノリ「慰めようとして…」 ナオト「わかってるよww頑張るよ!」 ミノリ「なんだぁっww」 〜4.ゲームセンター 止まらぬ話〜  お互いちょっと引っかかることを  言ってしまったオレ達。  話に区切りがついたと思ったオレは  付き添ってくれと誘い…  レトロなメダルゲームの数々  伸縮部分が錆びてきているクレーンゲーム  いろいろなアーケードゲームができる  夕日が入口を優しく照らしている  街中の小さなゲームセンターに行った。  ゲームセンターの入り口では  夕日のオレンジ色の光が  ガラス戸を照らしている。  中からはメダルゲームのカラカラという音  クレーンゲームの「ピンポーン」という効果音が  絶えず響いてくるのを聞いていると  オレの気持ちは落ち着いた。 ナオト「なんかさ     こういうとこ来ると落ち着くよな。」 ミノリ「ただの現実逃避だろ?」 ナオト「だろうな。     でもここにいる間は     少なくとも崖っぷちとか     考えなくて済む。」  メダルゲームコーナーへ行った。  メダルゲーム中もオレの口は  止まることを知らず… ナオト「…成績悪い癖にゲームばっかして     ちゅうにびょーヲタクに     なっちゃったオレには…」    「誰ひとりついてくる     オンナはいないよ。」  再びそんな話をし始めたため  ミノリは疲れたような表情をして… ミノリ「話に疲れたから     来たんじゃねえのかぁ…」 ナオト「うんっ違う!     24時間口止まんねえかもww」 ミノリ「はぁ…」 ナオト「勉強でも恋でも負けるオレだけど     ゲームなら勝てるかもって思ったら     モヤモヤ晴らしたくて     足が言うこと聞かなくなって…」    「ダメってわかっていながら     こうして今も勉強進めもせずに     ゲーセンに来ちゃってる。     どうすればオレは…」 ミノリ「ゲームをするのがダメってわけじゃないし     それでいいんじゃないの?     ナオトの得意なことを伸ばしていけば。」 ナオト「おっしゃ次は     ミノリにゲームで勝って     オレも一個上の世界行ってやるぜ!」 ミノリ「やりたいこととか得意なことで     勝とうとしてる時点で     オレにはもう負けていないよ。」 ミノリ「…そういや     ユウハが今頃どうしてるか     気にならねえか?」 ナオト「あいつもゲームセンターに     来てたりしてな。」 ミノリ「ありえるな。」 ナオト「次、ユウハの話でも聞くか。     どうせアイツの方が崖っぷちじゃないし     オレなんかよりは     ずっと充実してそうだ。」 ミノリ「どうだろうな…。     案外そうでもねえかもよ?」  するとミノリはふとスマホの時計を見た。 ミノリ「ん?」 ナオト「どうした?」  ミノリはリュックを眺め  少し考えこみ始めた。
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