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preEPユウハ編『たまるたまらぬ オレたちのいろいろ』
〜1.ミノリ思いやり メダルの余り〜
メダルゲームをし始めて時間がたってから
スマホの待受画面の時計を見たら…
ミノリ「あっ…もうこんな時間か…
いつも自主勉やってる時間だ。」
「どうしようかなぁ〜ってか…
オマエは帰らなくてもいいのか?」
勉強するために帰ろうとしたミノリ…
ナオト「じっ自主勉!?
今日からオレたち春休みなんだし
遅くなってもよくねえか?」
高校の勉強の予習とか
しておくべきだと思い
一瞬断る選択肢も頭をよぎった。
だがナオトを勇気づけるためにも
今日は一緒に楽しもうと心に決めた。
ミノリ「そっか春休み…だな!」
ナオト「だろっ!」
そう言ってから二人がプレイしたのは
ゲームコーナーのなかでも
運要素がかなり多めの
4人で遊べる大型メダルゲーム。
ナオトは大はずれで0枚…
ミノリは大当たりを引いて
メダル77枚獲得!
ナオト「はぁ〜…
はずれても3枚、
当たっても10枚くらい
だと思うんだけど…違ったっけ!?」
「オマエはいいよなぁ〜
メダル残ってはいるだろうし
2回目2回目…」
からっぽのメダル獲得口と
からっぽになったナオトのメダル入れと…
まだまだメダルが残ってるし
溜まっていってるオレのメダル入れ…
ナオト「はぁ…マジかよぉ…」
勇気づけようと思いやり始めたが
早速予想外れの展開が始まった。
ミノリ「ナオト、
もうメダルないのか?」
ナオト「あると思ってたのに…」
そう言うナオトの表情は暗かった。
ナオト「ミノリは溜まっていってんだろ…
運ついてるからだろ…」
ミノリはナオトを励まそうとしたが…
77枚以上とゼロ枚かぁ。
ふたつのメダル入れを見て
他の言葉が思い浮かばなかったミノリは
申し訳無さそうに返事をした。
ミノリ「……うん、かもな。」
〜2.オンナと運 二人の共通点〜
ナオト「オマエはいいよな…
ついてくるオンナいるし
運もついてるし…」
「オレはまったくだよ。
ついてくるオンナいないし
運もついていない…」
不満がたまりにたまりまくっている
ナオトがこんなことを言った。
ナオト「ついてくる側に
生まれたかったなぁ…」
そんな話をしていた二人に
オレは話しかけた。
ユウハ「よっ、ホントにそうだよな。」
ふたり「ユウハ!?」
ミノリ「どこにいたの?」
ナオト「急に話しかけてくんなよ!」
ユウハ「二人がなんか
いつもと違う話してんなって
着いていってみたいって思ってさ。」
ナオト「盗み聞きかよ。」
ミノリ「友達だし
まあ今回はいいけどな。」
オレはユウハ。
オレもナオトと同様、
中学生になってからのミノリの男友達。
ユウハ「でもついてこられる側は
ついてこられる側で
色々あるんだろ?」
ミノリ「まぁな」
ナオト「ホントにぃ?
そんなのウソだろ?ないだろ?
いいよなぁ〜モテる人って…」
すると二人は口を揃えて言った。
二人 「早く告白してぇ〜」
ナオトの話を聞いて退屈にしていた
ミノリが明るい表情に戻った。
ミノリ「えっ!?あっ…そうか…」
ナオト「一緒なの!?そうなの!?」
ミノリ「オレは単純に
告白とかのフェーズに
入りたいだけ…けど…」
ミノリ「オレみたいな人になって
女子に告白したいなぁ…
ってんだろ?」
ナオト「まぁそうだけど…」
ミノリ「つまりは
女子に告白したいっていう目標が
オレとオマエは一緒!」
ナオト「そう言っても
やっぱオマエのほうが
ゴール近い気するけどなっ!」
ユウハ「女子に告るが…目標…」
ミノリが目標のことを言うと
ナオトも顔色を戻して笑顔になった。
〜3.二人の笑顔 ユウハの本音〜
ミノリ「オレとオマエの違いは沢山あって
嫌だと感じるだろうけど…」
「おんなじとこだって
オレが劣ってるとこだって
いっぱいあるはずだよ。
だから一緒に頑張ろう!」
ナオト「そうだね…うん!
頑張ろう!」
ミノリは落ち込んでいたナオトに
こんな提案をした。
ミノリ「メダル半分やるよ。
春休みだしもっと遊びてぇだろ?」
ナオト「ありがとぉ〜!!
これがモテと崖との違いかぁww」
ユウハ「オレにも分けてくれねえか?」
ミノリ「二人だけでは
使い切れねぇだろうしな!」
ナオト「そうかぁ?
いがいと早く
終わったりするかもよ。」
「あっ…当たり
引き続けることもありえるか!」
確かにミノリの運が
このまま続くとしたら
メダルは増える一方だ。
ユウハ「確かに使いきれねえ、
すぐ終わるかもしれねぇ、
どっちもありえるな。」
ミノリとナオトの中で
これからの目標もできて
一件落着と思っていたが…
ユウハ「けどさぁ…」
オレには自分に自信をつけるために
理論武装をし始めるような一面もあって
それが発動してしまった。
ユウハ「オレはモテたいとも告白したいとも思わねぇんだよなあ…告白するのが目標なんてオレにはありえないや。やったことあるって言ってもモテたいとか思ってのじゃないし、相手に合わせようとしすぎても友情を疎かにしちゃってもってのが難しいんだよ…」
ナオト「え?どういうこと?
告りたくねえの?なんで?
誰かと付き合うってそんなに嫌?」
ユウハ「嫌なことではないけどさ。」
ミノリ「えっ?」
そのときオレは思った…
ゲームしながらでも
オレの話要約できたのなんでだ?
オレの眼中に入ってないだろって
自分で考えてたくらいの頭なのに…
〜4.謎の境界 謎の言い換え〜
ユウハの意見に影響されたナオトは
またオレの話をし始めた。
ナオト「モテたい…告白したい…
あっ!そういえば!」
ナオト「ミノリには
幼馴染いなかったっけ?
スズメって言ったっけ?」
「あんなにずっと一緒にいるんだし…
アイツに告白すればいいじゃん。」
そう聞いてオレは
確かに…と思った…が…
ミノリ「スズメはオマエの言う通り
これまで同じ学校を辿ってきた
幼馴染の友達だよ。」
「けど告白したいとは
思うことが無いなぁ…」
ナオト「え?なんで?
バカにされるような
関係じゃないだろ?」
ミノリ「ああ、なんて言うか…
スズメも何も言ってこねぇし…
オレもなんて言うか…」
ナオト「なんだよそれぇ〜
先に言えばいいじゃん!」
ミノリ「他にもいるしな…
他もオレにとっては
いまひとつっていうか…」
ナオト「えっ!それって
言っていいヤツ?」
ナオトにそう言われて
流石に言い過ぎかと後悔したミノリ。
ミノリ「言うとおりだよ…
言い過ぎた。」
オレは二人に自分の想いを伝えた…
ユウハ「これがついてこられる側の色々。こういうのになるし嫌なんだっ…恋愛を恋愛として考えたくねぇんだよ…だから難しいんだよなぁ…恋愛恋愛って最近二人ともいうけどさぁ。」
しかし、ナオトは
ユウハの言葉が理解できなかった。
ナオト「恋愛を…恋愛として…
ってなんなんだ?」
「オマエらは
恋愛がどうとか目標がどうとか
話せる余裕があるからいいよな。」
「勉強できないし恋もできないから
話に入る資格とは言わずとも
少なくとも同じ世界へのドアノブが程遠いよ。」
理解できなかったとしても
ナオトはすごいよ。
よくまとめれるなぁ…
ユウハ「ドアノブ?」
ミノリ「ドアノブ、そうだよな。
けど話をまとめれたのすごいよ。」
ナオト「そうかな?」
ミノリ「ドアノブって話
実はオレも感じてたんだよな。
勉強も恋も最初は全然自信なくて。」
「今では古き思い出だけど
スズメがずっと応援してくれてたから
なんとか続けられたんだ。
だから友達でもないんだよな。」
ナオト「オマエにも
オマエみたいな存在がいた
ってことか?なんかエモいなあ。」
ユウハ「オマエって意外と謙虚だよな。
ついてきてくれる女子いるくせに。」
ミノリ「だからこそだよ。
オレだってナオトみたいに
これでいいのかなって思ったり
ユウハみたいに関係の悪化を恐れたり
しながら頑張ってんだよ。」
ユウハ「なんでそんなに続けられんだ?
お互いの人生を賭けてるみたいで
オレは嫌なんだ。」
ミノリ「恋愛ってオレもまだまだだけど
合わせるゲームじゃないのか?」
ユウハ「違うだろ!日常の延長線上だ!
どっちにしろ恋愛って…
難しすぎんだよ…」
ミノリ「そういう難しく考えることが
ユウハのいいところだけど
もう少し楽しさを探さないか?」
その話にとどめをつけたのは
ミノリでもなくユウハでもなく、
チョコひとつもらえないほど
女子達に下に思われているナオトだった。
ナオト「うん〜っ…
というか恋愛ってなんなの?」
「オレでもみんなに勝てるものが
さらにわかんなくなったよ。」
「勉強もわかんないことだらけだし…
恋愛もわかんないことだらけだ。」
ユウハ「そういわれてみればそうだよな。
恋愛ってどこまでが恋で
どこからがただの友情なのか、
俺にはよく分からないんだよな。」
ミノリ:「…確かにスズメを特別な存在って
思いかけたけど特別な存在って何だろうな。
オレも考えたことないけど
ただ好きな人が笑っててくれたら
それでいいのかも。」
それぞれがそれぞれの
浮かれない日々に悪戦苦闘しながらも…
スズメも含め四人とも男女共学の同じ高校
百野花高校の受験に合格していた。
ナオト「このまま高校行って
勉強も恋愛も
みんなについていけるかな?」
ミノリ「まっ…オレもユウハも未熟だし
なんかあったときにはまた
今みたいにあったら話そうよ。
三人いれば何とかなるだろ。」
ユウハ「そうだな、オレたちもまだ未熟だな。
というか完成するときは来るのかな?
じゃあ、次は入学式でな。」
そして月日が経ち桜が舞い散るなかで
百野花高校の新たな制服を着た生徒たちが
入学式という看板のある門をくぐっていく。
もともと弱虫だったことを隠し気味の
モテモテの優等生であるがちょっと気弱なオレは
自分の高校生活を想像して胸が小さく弾んだ。
勉強も恋もうまくいかなくて不安いっぱいななか
その気持ちを押し隠すようにして深呼吸をしながら
制服姿のユウハとミノリの後ろ姿に笑みを浮かべたナオト。
恋愛について二人とは違う価値観を持っていると気づき
理論武装しがちな性格と強気な性格を落ち着かせるため
ユウハは静かに目を閉じ風に流れる桜の香りを味わった。
この物語は彼らが新たな生活や出会いのなかで
新しい自分たちに出会っていく
ほろ苦くて甘酸っぱい青春の物語である。
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