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第一章第二節『隣り合う席 フタリのフルーツ』
《第一節
モモネが教室に入ると、
周囲の空気が一変した。
まるで時間が止まったかのように、
みんなの視線が一斉に彼女に集まる。
その美しさはまるで
映画のワンシーンのようで、
まばゆいばかりの輝きが
彼女を包んでいた。
ナオトもその例にもれず
彼女に視線を注いでいた。
ナオト「はぁ〜っ♡
やっぱモモネかわえぇっ♡」
ナオトがモモネのオーラを浴び尽くし
自分の教室に戻っていった後…
オレは何も考えられなくなり
視線は彼女の姿に向いて見惚れて
その場で固まっていた。
教室中が息を呑むような静けさのなか、
モモネだけが自然体で
微笑みながら教卓を横切る。
国民的美少女のモモネは
オレのクラスの教室に入って
どこに座るのかなっと眺めていたら
教卓から教室の右端を通って
オレの目の前を通って左隣の席に座った。
モモネ「席隣だね♡
よろしくね!!」
その柔らかな声と明るい笑顔に
オレは戸惑いを隠せなかった。
冷静さも謙虚さも失った自分を
自分で驚き疑い恥ずかしさが全身に。
モモネはオレも含む周りの注目に
全く動じることなく
隣の席に座っていたオレに
しゃべりかけ自然体で微笑んだ。
モモネの自信に満ちた表情と
モモネが同じクラスの隣の席に
割り振られたという奇跡にオレは…
ミノリ『えっ!!ホントに!?』
自分の声が震えたことに気づいたが
モモネはそんなオレを見つめながら
少し照れたような笑顔を見せる。
ミノリ「キッ…キミって…
も…もしかしてっ
もしかしなくても…」
ミノリ「モモネ?だよね?」
モモネ「うん♡」
ナオトから話を聞いた国民的美少女は
オレが恥ずかしい表情をしているのに
深く頷いてオレに笑顔を見せてくれた。
ミノリ「国民的美少女って…」
モモネ「中学生の頃に選ばれたんだ。」
ミノリ「すごいねっ…」
モモネ「そう?
そんなに変わんなかったけど…」
その言葉に口をぽかんと開けて
自分でも恥ずかしいなと感じる表情に。
このときのオレは
笑顔を見せ続けてくれるモモネに夢中で
あまり違和感を持たなかったが…
教室のあちこちから
モモネに関する囁き声が飛び交った。
ワタシ、モモネちゃんに
会ってみたかったんだ!
ワタシも!
モモネいるぞ!告ってこいよ!
えぇっ!あんな人とオレってぇ…
モモネは生徒も先生もヤラレてるのに
違和感も何も持たずに堂々としている。
有名になって何も変わんなかった
っていうのはモモネの主観なのだ。
単にみんなが自分に釘付けであることを
モモネが気づいていないだけ、
そういうことだ。
ミノリ「ホントに?」
モモネ「ワタシはそう感じてる。」
そしてこんな言葉を
明るい笑顔でかけてくれた。
モモネ「ほっぺた赤くなってるよ。
大丈夫?」
優しくて美しい国民的美少女は
ドン引きしたりバカにしたりしなかった。
オレのほっぺは赤くなり
目に彼女の姿が熱くやきついた。
ミノリ「モモネ…♡」
明るい笑顔で答えてくれたモモネが
恥ずかしがり始めているのが
気になり始めてそのままではいられず…
周りからの視線に耐えられないのか
堂々として自分を強く見せてるのか
それに似た状態なのかもしれないと思い…
ミノリ「国民的美少女だからって…
みんな注視しすぎだよな。
恥ずかしいよな?」
モモネは首を横に振った。
モモネ「そう思う?
でも、私は気にしてないよ。」
何の迷いもなく堂々とした声で
言い切ったモモネにオレは
ただの美少女ではない、
そう思い心を惹かれていった。
ミノリ「そっ…そうなんだ。
それなら良かった…
オッ…オレ…ミノリ…よろしく…」
モモネは
オレの名前を聞き返さずに
浅く頷いた。
少し落ち着きを取り戻したオレは
何気ない話題を振ることにした。
ミノリ『あのさ…キミって…
フルーツ…何が好き?…なの?…』
「オッ…オレは…
グレープフルーツ…
が好きなん…だけど…」
すると少し戸惑ったのか驚いたのか
口を丸くしながら答えた。
モモネ「えっ…
グレープフルーツ
…っだよ…グレフルだけど?」
その答えにオレの目は輝いた。
ミノリ「ホントに!?グレープフルーツ?」
モモネ「うんっ!グレフル…だね!」
ミノリ「お…同じだっ…
は…話してくれてありがとな…
それもグレープフルーツじゃなくて
グレフル!?」
かっ…かわ…いい…
ミノリはその瞬間を心に刻んでいた。
昔から誰よりも弱虫=引っ込み思案で
誰とも打ち解けれなかったオレが…
国民的美少女選抜企画の大賞をとった
美少女の隣の席で高校生活を共にするなんて
夢にも思わなかった。
そう感じていたときにオレの顔は
グレフルのように真っ赤に染まっていた。
笑顔や優しさを持ち合わせて
好きなフルーツがグレフルという
共通点を持つ美少女に
ミノリは、恋をした。
何かまだ他に共通点がある気がする。
モモネはただの美少女じゃない。
なぜそう思うのかはわからなかった。
ミノリ「モモネ……よろしくな!」
モモネ「うん! ミノリ君、よろしくね♡」
これがオレとモモネ
フタリの甘酸っぱくてときにほろ苦い
高校生活の日々の中での恋の始まりである。
第一章完結__
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