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preEPミノリ編『独りぼっちのオレ 話しかけてくれたキミ』
〜1.泣き虫ミノリ 母の手伝い〜
オレはミノリ。
みんなも同じかもしれないが
オレは泣いて誰かに抱き着くという
ほろ苦い想いを経験し続けてきた。
飛んできたカラスがの鳴き声に驚き
転んで尻もちついて大泣きして
ミノリ「怖いよ〜っ!!」
同い年くらいの男の子に
ねぇっ!ねぇねぇねぇっ!
と話しかけられても
なんて話せばいいのかわからなくて
ミノリ「もっ…もっ…
もうむりぃ!!」
そんなことが起きるたびオレは
母さんのほうに抱き着いたため
親は不安と心配でいっぱいだったらしい。
エミ 「もう…
ミノリは大の弱虫ね。
ワタシが見続けないと
いけないのかしら。」
だが
母さんは勇気を振り絞って
一人っ子でこんなにも弱虫のオレに
保育園の入園について伝えた。
その際にもオレは母さんに抱き着いた。
新しい環境を恐れたのだ。
ミノリ「ねぇ母さん、
保育園なんてとこ
行きたくないよぉ…」
「みんなと仲良しできないよ…
かあさんいないとさみしいよ…」
しかし
仕事を再開させたかった母さんは
こう言ってオレを説得した。
エミ 「お手伝いお願い!
ずっとワタシがアナタを
見ておくなんてできないから…」
ミノリ「えっ…お手伝い?
これってお手伝いなの?」
エミ 「いつも心配ばかりしちゃって
ミノリにできてなかったけど
初めてのお手伝いのお願いね。」
父さんと母さんとの話から
手伝いやお願いという言葉が出た時
温かい雰囲気が生まれてたと感じた。
一瞬戸惑ったけれど
そうだと気づいたときオレは頷いた。
ミノリ:「…うん、やってみる。」
~2.保育園で独りぼっち 月日過ぎ行く~
オレは反発したこともあったが
保育園に行くと決めてからは
その環境でなんとか過ごそうと努力し始めた。
車のおもちゃを
ひとりで動かして遊び…
ミノリ「ぶ〜ん……
ぶ〜ん ……」
しかし
友達とのお遊戯の時間も
話しかけたり話しかけることが怖くて
遊戯をやろうという気にもなれなかった。
ミノリ「ぶ〜ん … …」
車で独り遊んでいるところに
先生が話しかけに来て
ペアになることが多かった。
母さんは弱虫のミノリは
強気の人とうまくいかなくて
問題を起こすと心配していた。
ミノリ「ぶ〜ん … … …」
けど...実際はこの通り
誰にも声をかけれなくていつも独りぼっちで
強気の人と関わることすらなかった。
不思議に思われたり
話しかけられたりすることもなく
そのまま月日が通り過ぎていった。
だから苦しさとか寂しさとかを感じずにいた。
そんなオレの肩をトントンと叩いて
優しく話しかけ始めてくれたのが
同い年のスズメだった。
ミノリ「あっ?うんっ?」
〜3.スズメとの出会い 二人の価値観〜
友達と遊んでいたスズメの目には
いつも独りで遊んでいるオレの姿が
友達に協力をお願いする
余裕もできないくらい
放っておくこともできないくらい
寂しそうに映っていた。
スズメ「ねー!ミノリくん。
友達になろ。」
ミノリ「と…友達?」
自由時間もお遊戯のときも
昼ごはんやおやつのときも
いつも一緒に行動する友達がいたスズメは
つながることに喜びを感じていた。
誰ひとり友達といえる人がいないどころか
"ともだち"の言葉すら知らなかったオレは
つながることに恐れていた。
ミノリ「ともだち…になる?いいの?」
スズメ「うん!」
スズメが笑顔でオレを迎え入れてくれたとき
オレは友だちってなんだろうって感じた。
しかしそのときに感じたのは
怖さよりではなく嬉しさだった。
それが夢のように思った。
しかし
また言葉が出なかったし
恥ずかしさを抱きもした。
ミノリ「えっ…なんだろっ
ありがと!」
スズメ「アタシ、スズメ!
よろしくね!」
ミノリ「あっ…うん…
…っよろしく?」
よろしくの意味も知らないオレは
知識の無さにさらに恥ずかしくなり
スズメから目を背けた。
そんなオレの気持ちそっちのけで
スズメはすぐにこう尋ねてきた。
スズメ「ミノリくん、
どーしてみんなと
話さないの?」
明るく振る舞ってくれるスズメ…
オレの心は恥ずかしい気持ちを忘れ
徐々にだが温まっていった。
ミノリ「カラスさん怖いし
話し続けるのができなかったら
困らせちゃうかもって…」
スズメはオレの心が
温まりきれない原因である恐怖心を
持前の笑顔でかき消してくれた。
スズメ「カラスさん怖いの?
こんなくらいっ?
こーんなくらいっ?」
ミノリ「こ〜〜〜んなっくらい!」
今考えれば手と言葉だけじゃわからない
結局どれくらいなんだって感じだけど…
その時はそれでオレ達はわかり合えた。
スズメ「そーなんだ。大丈夫だよ。
アタシがいるから安心して。
何かあったら言ってね!」
おどおどし続けるオレを
引き離すことも笑うこともせず
笑顔で明るく接してくれたスズメ。
ミノリ「…ありがとう、スズメ。」
弱虫で何も言えずに
独りぼっちでいたことで
ほろ苦さを味わえた。
スズメが優しく話しかけてくれて
明るく接してくれたことで
甘酸っぱさも味わえた。
ほろ苦い経験があったからこそ
甘酸っぱい喜びが訪れたのだ。
〜4.弱みなくして成績トップ〜
それから年月が経ち
小学校の入学式になった。
相変わらずスズメ以外の人に対して
あまり打ち解ける事ができなかった。
どうすれば打ち解けられるだろう…
どうすればみんなと馴染めるだろう…
弱虫早くなくしたい!
考えを巡らせた末に
とある目標の設定に辿り着いた。
独りぼっちという弱みを消したい!
みんなに頼られてみたい!
そう考えて実行に移すため
一つの目標に向けて
取り組むことを決意した。
ミノリ「テストでいっぱい100点取れば
みんなの力になれるはず。」
そうやって目標を決めようと思えたのはきっと
スズメが話しかけて励ましてくれたことで
つながることの恐れが喜びへと変わったから。
ミノリ「オレはみんなに頼られる人になる。」
そうやって目標を決めれたのもきっと
スズメがオレに引き離さず接し続けてくれたことで
頼り頼られることの喜びを教えてくれたから。
スズメは持ち前の笑顔と温かな振る舞いで
オレへの応援を約束してくれた。
スズメ「それっいいじゃん!」
ミノリ「オレ頑張るよ!」
スズメ「うんっ!」
それからオレは決めた目標に向けて
持ち前の継続力を武器に
ひたすら勉強に励んだ。
失敗することは怖いけれど
努力を続ければいつか結果が出る。
支え続けてくれるスズメ、
少しずつ強くなっていくオレの心。
その努力の成果は中学で花開き
中学では成績トップに。
ミノリ「90点!?やった!」
オレは周囲から
「モテモテの優等生」として
注目されるようになった。
幼いころに困らせた同い年の祖母は
オレの近隣で暮らしており
家の周りの人同士の井戸端会議でも
昔からオレの話題がよく出ていたという。
そこでもオレは弱虫としてじゃなく…
好青年として話してくれるような存在になった。
母さんはオレのことを心配し続けていた。
隣住民「ミノリくん。
たくましくなったわねぇ〜
モテモテの好青年じゃないのぉ」
エミ 「そ…そうですか?」
隣住民「そうよっ。まえに別人かと
勘違いしたくらいだよぉ。」
「やっぱりアレは
見間違いとかじゃなくて
ミノリくんだったのねぇ。」
しかし、自分の息子を褒めまくるおばさんに
照れていることを隠し切れなくなった母さん。
エミ 「そんなことないでしょ~。
まだ弱虫なのは変わんないし
ホントに別人だったんじゃ…」
隣住民「成績トップなんでしょ。
謙遜なんていらないよぉ…」
エミ 「そっそうですよね…
でもなんて言うんでしょうか…」
隣住民「ミノリくん、
自分なりに成長するために
努力してきてるんじゃないの?」
エミ 「そうなんですかねぇっ…」
小さい頃に迷惑をかけた
同い年の男の子の親戚である
近所に住んでいるおばさんでも
そう思ってしまうほどに…
エミ 「ミノリも
一緒にいると気づきづらいけど
日々成長しているのね。」
「駄々をこねに来てたあの子が…
そう考えると…なんだろう…」
「うれしさとさみしさが…
交差してるというか。」
…みんなに頼られる人
…モテモテの優等生
と言える存在になれたのだ。
隣住民「努力が実った結果なのね。
良かったわねミノリ君。」
ミノリ「はい。」
頼ってばかりで弱虫と言われた
ほろ苦い経験があったからこそ
モテモテの優等生として注目されるという
甘酸っぱい喜びが訪れたのだ。
支えてもらうことは恐れるべきことではない。
オレの胸に今でも焼き付いている
友達が教えてくれた第一の教訓だ。
そして年月が経ち
桜が舞い散る季節となった。
ミノリ「ありがとう、スズメ。
オレ、これからも頑張るよ。」
中学校を卒業したオレには
新しい世界が待っている。
そんな気がした。
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