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話を整理しよう。
まず私たちは入学式に出会った。わかる。
私が折谷くんを好きになっていったように、彼も私のことを好きになっていった。わかる。
てなわけで私にアリオリ星の王女になってほしい。わからん。
「……アリオリ星って何」
「アリオリ星はまだ歴史の浅い惑星で、小さいけど美しくて平和な星だよ。先代から聞いた話だけど、僕の先祖が地球で食べたアーリオ・オーリオに感銘を受けて作った星なんだって」
「はいわからん」
説明を聞いてもまるで理解できなかった。てかそんな理由で星って作れるの。
「え、じゃあ折谷くんは宇宙人ってこと?」
「そう、僕はアリオリ星の王子だ」
「しかも王子」
「僕たち王族は十六歳になったらこうして地球の学校に通うんだ。そして王女を迎え、一緒に星に還るという伝統がある」
「それなんで私なの?」
「僕は君が好きで、君はアーリオ・オーリオが好きだから」
いや意味がわからない。そんな話、聞いたことないんだけど。
本当に世界にはまだまだ知らないものだらけだ。
「そんな星どこにあるのよ」
「地球から宇宙船で片道二時間弱。月からは片道四十五分の好立地」
「物件みたく言われても」
「学校もなんとか通える距離だよ」
そうだったのか。毎日二時間かけて登校していたとは。
確かに折谷くんが誰かと一緒に登下校している姿を見たことない。
「国もあれば、国民もいる。みんなアーリオ・オーリオが好きでね。もちろん国歌もあるよ」
折谷くん、もといアリオリ星の王子はそう言って歌い出した。
てかそれさっきの呪詛じゃん。
「……それで、大事な話っていうのは」
「もちろん僕と一緒にアリオリ星で暮らさないか、って話だよ。有川さんもアーリオ・オーリオ好きだし王女いけるって」
王女の資格軽すぎない? いやそれより規模の大きすぎる告白に私の思考はまだついていけていなかった。
当然だ。どうして今まで一緒に過ごしてきた同級生を急に宇宙人だと思えるだろうか。確かに彼の立ち振る舞いは高校生離れしてたけど。
でもまさか地球離れしてるとは思わないでしょ。
「けど、無理強いはしないよ」
考え込んでしまった私に、優しい声が降ってくる。
「僕は王子だからアリオリ星を捨てるわけにはいかない。でも有川さんはただの高校生だ。これから王女でも、モデルでも、小説家でも、何にでもなれる。君の道を塞ぐことだけは絶対にしたくない」
顔を上げると、そこには真剣な表情の彼がいた。
その顔は当然のように、毎日同じ授業を受けて同じ宿題に頭を悩ませる折谷くんで。
「君の未来は君だけのものなんだから」
私が恋した、ただのイケメンクラスメイトだった。
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