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「いま6週だね。今回は仕方ないけど、これからはお酒厳禁ね。はい、おめでとう」
天界の医師が怒っているのか喜んでいるのかわからないアルカイックスマイルで、カミノにエコー写真を手渡した
そこには小さな空豆みたいな黒い影が写っていた
「きゃわわ」
ライタが謎の嬌声を上げた
そればかりか、カリンカのリズムで踊り出すもうだから、看護師に落ち着くよう嗜められていた
カミノが点滴を受けている間も、ライタはエコー写真を手放さず、風船のようにふわふわ揺れながらニヤニヤ笑いを浮かべていた
「やっぱりあの時の子供ですかね」
「そういうのやめろよ…あの時の子だろうな…」
【あの時】というのは、トイレでの性交のことだ
Ωに転性したのはその少し前だ
転勤が決まった時に二人で話し合って、第1世界では子作りに励もうと決めたのだ
転性するにあたって、週数の計算方法なども勉強したからおそらく間違いない、という結論に達した
※※※
そして現在
「それじゃあ行ってきます。荷解きも結構ですけど、無理しないでくださいね!」
天界において、引越し翌日からの出社はデフォルトらしく、ライタは名残惜しそうに家を出た
「はーい!いってらー」
歯磨きをしながらカミノは答えた
12世界のライタの家に似ているからか、妙に居心地が良く、初日からぐっすりと寝ることができた
洗面所の小窓から見える外の風景ですら輝いて見える
カミノは歯磨きを終えたら散歩に行こうと決めた
約二ヶ月に及ぶつわりで、体重は落ち、体力もなくなった
ライタは転勤を遅らせ、献身的にカミノの介抱をしてくれた
体は大変だったが、心は幸せで、ライタを独り占めできるならずっとつわりでもいいやと思ったものだ
(んなわけあるか。クソ辛かったわ)
タバコを辞めて久しいが、時々口寂しくなるときは棒付きの飴を咥える
カミノはサンダルを引っ掛けて外に出た
いつの間に雨が降ったのか、アスファルトの道路は濡れて、ところどころ黒く変色していた
ちょっと前まで雨の匂いでもえずいていた
いまは胸いっぱいに吸い込むことができる
(おーい子供。お前も吸ってるかー)
カミノは朝の新鮮な空気の中をブラブラと歩き始めた
駅に近づいたのか、通勤通学の社会人や学生が増えてきた
大きめの白シャツにレギンス、足元は素足にサンダル、金髪をラフにまとめ、口には飴を咥えているカミノは悪目立ちする
引き返そうと振り向いた瞬間、何かに体が当たると同時に
ポタタ
頭に何かぎ降ってきた
瞬時に鳩の糞だとわかった
「「げ、最悪」」
声が重なった
ぶつかった相手は女子高生で、彼女の頭にも鳩の糞がついていた
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