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「いらっしゃいませ、吉岡様」
「本日の珈琲をお願い致します」
「もちろんですとも」
いつもどおりカウンターに腰掛けるとミケがニャンとないた。三毛、じゃないよな。
「相澤様、こちらの方が吉岡様ですよ」
その瞬間、隣に座っていたおっさんと目が合って、次の瞬間強烈なタックルを受けた。
「ぎゃあぁあ何だ? 何‼︎」
「ありがとう! ありがとう! あんたがいなければ!」
「相澤様おやめ下さい!! 警察を呼びますよ!!」
「助け……相澤さん?」
慌てて離れる『相澤』さんはなんかイケオジだった。
やけに彫りが深く身長は180ほど、きりりとした眉毛に通った鼻筋、澄んだ切れ長の瞳に鍛えてるっぽい体格。めっちゃモテそう。
あれ? 相澤さん? うん? 男? 伊織って男名だっけ。
そして気づくと相澤さんはアイリスの床に綺麗に土下座していた。
「吉岡様。ありがとうございます。この相澤伊織、吉岡様のためであれば炎の中でも」
「相澤様、本当におやめ下さい。吉岡様が困っていらっしゃいます」
今朝マスターがアイリスを開けようとすると入り口でミケと同じように相澤さんが土下座をしていたらしい。慌てて店にいれるとミケに飛びつこうとしてミケはぴょんと逃げていったようだ。塩対応らしい。
ともあれ、その日、お礼は号泣する相澤さんにモーニングを奢ってもらうという羞恥プレイで落ち着いた。なんか愛されそうな人だなとは思った。
ともあれ相澤さんがライバルでないことにホッとした。
以降、ミケはたまに相澤さんの家を脱出して朝アイリスの前に行き、相澤さんがミケの所在を確認して出勤することがたまにあるそうで、アイリスでたまにミケを見かけることがある。
ライバルは結局増えたままである。
了
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