果てしなく青い空を見た日

6/14
前へ
/14ページ
次へ
この頃には、皆受験で頭がいっぱいだったからか、私へのいじめはぱったりとその鳴りを潜めていた。 嘘みたいに平穏な毎日。 けれど、いじめが無くなっても、私は変わらず毎日ヤマと会っていた。 手紙や電話で待ち合わせをしている訳ではない。 ただ、私が『逢いたい』と思うと、何故だか不意に、彼の方から逢いに来てくれるのだ。 この上なく幸せで楽しい時間を、私達は過ごしていた。 ただ、少し気になったのは、学校で1度も彼の姿を見たことがないこと。 けれど、それを尋ねてみると、ヤマはいつもの様に笑いながらこう言った。 「事情があって、少し遠くの学校に通ってるんだ」 と。 事実、その通りの様でーー彼は、私の知らない遠くの町のことをよく知っていた。 そうして、知らない町の話を、よく私に聞かせてくれた。 私にとって、ヤマの話を聞く時間は、掛け替えのない宝物の様な時間だった。 けれど、その時の私は知らなかった。 過去の自分の幼稚な行いのせいで、その全てを失うことになるなんて。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加