19人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の気持ちに気がついた私は、ただ走った。
生きる為に。
青空に、衝動に、突き動かされた様に。
先ほど来たばかりの入り口は使えない、イケメン君の取り巻きが来ているのが見えたからだ。
なら、どうするか。
(……確か、フェンスの近くに非常用の滑り台があった筈。あれで下まで降りよう)
しかし、その非常用の滑り台は当のイケメン君の真後ろにある。
(でも、行くっきゃないよね……!)
私は覚悟を決めてイケメン君に向かって突っ込んだ。
今まで逆らうことがなかったサンドバッグが向かって来たからか、驚いて目を見開いたまま固まっているイケメン君。
私は彼の真横をすり抜けると、非常用滑り台が仕舞われている格納庫の扉に手をかけようとする。
が、その瞬間、
「逃げんなよ!!!」
強い力で私は突き飛ばされた。
バランスを崩し大きくよろめく私の身体。
(あっ……!)
踏ん張ろうにも、先ほど浴びせられた水のせいで足が滑り、上手く立つことが出来ない。
(いやだ……!こんな所で、死にたくない……!)
「私は、まだ死にたくないっ!!」
そう叫ぶとフェンスを掴もうと手を伸ばす私。
けれど、水で手が滑り、掴もうとした勢いのまま、私の身体は青空の中へと投げ出された。
「ヤミ!!!」
逆さまになった視界に映ったのは、必死に駆け寄るヤマの姿だった。
彼はそのまま、フェンスを乗り越えると、虚空へと勢いをつけて身を踊らせる。
そうして、私を抱き締めると、耳元で優しく囁いた。
「もう、独りにはさせねーから」
(……ああ……ヤマトと一緒なら、こんな最期も悪くはないのかも?)
彼のその言葉に、私は微笑みながら頷くと、ゆっくり瞳を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!