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「ヤミ。起きろって、ヤミ」
「ん……?」
聞き慣れた、優しいヤマの声。
その声に私が目を覚ますとーーそこにはいつもと全く異なる姿のヤマがいた。
まるで深夜に放送している韓流ドラマの登場人物の様に、頭には黒い宝冠をつけ、真っ赤な道服を身に纏っている。
「……仮装??」
ちょっとだけ間の抜けた私の一言に、相変わらず快活に笑うヤマ。
「はははっ、仮装ってお前なぁ。こういう感じの服の像とか、見覚えないわけ?ほらほら、こういう板持っててさぁ」
そう言いながら、細長い板の様な物を取り出し、持ってみせるヤマ。
(あ、あの板……歴史か何かで習った気がする。何だっけ……そうそう、笏だ)
確か偉い人が持つやつなのではなかったか。
それを、何でヤマが……?
いや、違和感はそれだけではない。
確かに、ヤマが言う通りーー今の彼の姿は何処かで見た記憶がある。
(一体何処で見たんだっけ……?)
確か、お正月辺りに近所のお寺で見た様な。
そこまで考えると、私はハッと顔を上げ、ヤマを見る。
思い出した。
「閻魔様だ……」
「正解!」
ヤマは私の答えに満足そうに頷くと、ニッと笑う。
「俺の本当の名前は、ヤマラージャ。閻魔大王だ」
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