果てしなく青い空を見た日

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「なぁ、だからそんなに泣くんじゃねぇよ」 ーー俺は、いつでも1番近くでお前を見てるからさ。 ほんの数年前まで、私ーー花村 雅(はなむら みやび)、11歳は気弱ないじめられっ子だった。 上履きを隠されたり、教科書類を捨てられるというテンプレートないじめは勿論、担任が不在の時等はわざわざクラスの委員長が音頭をとり、クラスメート全員が1人1発ずつ殴って来たりするイベントが発生する位には、割りと悲惨な毎日だった。 (女子1人をクラスメート全員が1発ずつ殴るって、最早いじめを越えてるでしょ……) 時折そんな事を考えてみたりもするが、幾ら考えたところでこの地獄を抜け出せる訳ではないので、早々に考えることを止める。 いじめられる理由? そんなもの、特にはない。 私達が暮らしているのは、墓石の様な団地の立ち並ぶ、とても閉鎖的な小さな町だ。 だからーーきっと、憂さ晴らしをする生贄が欲しかった。 それだけだろう。 子供のいじめなんて、大した理由がないことの方が多いのだ。 幸い、私の場合は両親が全く私に興味を抱いていないので、いじめのことはバレずに済んでいた。 (いや、まぁ……娘が顔に切り傷大量につけて帰ってるのに気付かない方もおかしいんだろうけどさ……) だが、無関心なりに愛情(いや、この場合は義務的な気持ちか?)は、残っている様で、上履きが失くなれば直ぐに買ってくれるし、体操服がぐしゃぐしゃになれば、新品を用意してくれた。 自分の受けている悲惨ないじめーーそれら全てに目を瞑り、耳を塞げば、私はそれなりに快適な毎日を送っていた。 あの日までは。
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