ニワトリだ

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ニワトリだ

れんとようこは長い坂道を自転車を押してあるく。 「もうじきつくね」 「あとちょっとよ」 道の南側は削られてみはらしがいい。 「あたしたちのお家がみえるわ」 「あんなにちっちゃい」 道の北側は斜面に繁みが沢山ある。 いつなにがとびだしてくるかわからない。 もうじきテレビ塔のふもとに着く頃だった。 繁みからガサガサおとがした。 ワン! 野犬が飛び出してきた。 「わぁ」 野犬はそのまま走り去った。 「あ、びっくりした」 「噛みつかれると思ったわ」 ふたりは立ち止まって汗を袖で拭った。 その時だった。 コケコッコー いきなりニワトリの雄が飛び出してきた。 わぁ! きゃ! ニワトリは一瞬たちどまり二人をみつめると走り去った。 「やっちゃんが捨てたニワトリだ」 「かわいそうに」 「ぼくたちにはどうすることもできないよ」 「帰りましょ」 「うん」 れんとようこは心にもやもやをかかえながら自転車をこいだ。
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