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「ただいまー」
と帰宅してもなんの反応もない。当たり前だ。
念のため自宅には固定電話を置いてあるのだが勿論留守電のランプが灯ることもなく。持ち主と一緒でいつもあの電話は独りぼっちだ。たまに電話がかかってきた、なんて思って飛びついて出たら、ただのお墓の勧誘……、だったりした。いえまだ死ぬつもりはないんで、と断っておいた。声からして若い人間であることは伝わったろうが。
はぁあ……つまんない。
達己のいない日常は、退屈だ。ああやって行為に及んでも結局わたしは達己のいない日常へと。そして達己は『あの』日常へと――帰っていく。
人間、誰しも孤独だという。穴を埋める相手が欲しい。居場所を求めて彷徨う生き物であると。
ならば。
わたしと達己の出会いに果たしてどんな意味があるのだろう。十五年前に出会い――二度と会えると思っていなかったあの男と再会したのは。
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