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「美味しい展開ですが、心理学者としてどう分析します? 彼の感情を。……単なる、憧れ? それとも、真実の恋?」
「インプリンティング。刷り込み現象よ彼の感情は」にべもなく告げ、ホットサンドを頬張る。「まだ十代やそこらの男の子の恋って、風邪を引いたようなものよ。やさしくされれば誰でもグラッと来る」
「……まぁ、既婚者としては流石に、生徒に手を出すのはまずいか」よっ、とわたしの正面に座る麗奈は、「そーいや、斯波先生、来月から産休だよねー。お腹目立ってきたしー。ね、鏡。あんたも出産とか考えたりする?」
周りの学生たちがそれぞれの会話に夢中なのを一応目で確かめる。「……こういうところで話すような話題でもないと思うけれど。まあ、……YES」
「へー。鏡でも考えてたりするんだー子どもぉ」とうどんをすする麗奈。ずけずけとした物言いがかえって気持ちがいい。「なんかそういうこと一切興味なしーって感じなのにねえ?」
一応妊活中である。なので、「……性に耽溺するのが人間の生きる喜びのひとつでもあると思いますけど?」とご講釈を垂れてみる。麗奈は、わたしの冗談に、あっは、と喉を開けて笑い、
「そういうのは独身者の台詞だよー。うちら所帯持ちともなると、夫なんて粗大ごみみたいなもんじゃん。うちは、あたしの給与がないと飯、食ってけないし」
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