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そしてその日がきた。
この子の発情期がまだ2ヶ月先だったため、医師の管理の下誘発剤を投与され、ピルも処方される。それを服用した状態で僕達は部屋にこもることになった。
問題は僕の方だった。
いままでの症例はあくまでもオメガ視点であることに加え、発情を抑えることに焦点が合わされていたため、抑制剤とピルが効かないことは分かっていたけど、今回はアルファ視点。しかも欲情(発情)しなければならない。
発情したオメガを前に、たとえ運命の番でなくても欲情するのか。そしてもししなくても誘発剤は効くのか、それが全く分かっていない。
いくらこの子が薬によって発情したとしても、僕の方がその状態にならなければ番は成立しないのだ。
部屋に入り二人でベッドに上がる。
そこで並んでいると、その子の息が少し荒くなってきた。
「大丈夫?」
その子は小さく頷きながら、僕に潤んだ目を向ける。
その健気な姿が愛おしく、抱きしめてあげたい。
この子にとって、誰かと発情期を共にするどころか誰かと肌を合わせることすら初めての経験だ。それがこんな病院内でみんなに知られている中、誘発剤まで用いて行われるのだ。
それがどんなに、この子にとってストレスを与えることになるのか・・・。
それでも嫌な顔をせずに、こうして僕の隣にいてくれる。
なのに僕は、そんなこの子に触れることすら抵抗を覚える。
すぐ隣で少しずつ発情してくるこの子から、とてもいい香りがする。その香りは発情期特有のフェロモンを含み、本来だったらそれにあてられて僕も身体が昂って来るはずなのに、そこはなんの反応もない。
やはりダメなのか?
どうしてもダメな場合は医師を呼んで誘発剤を試すことになっているが、それまでにいくつか試すように言われている。
それを試そうと思ったその時、隣のその子がおもむろに下を脱ぎ、僕の前に座った。
「先生・・・辛かったら言ってね」
そう言うと身をかがめて僕の下肢に唇を寄せる。
布越しに触れる唇。その感触と姿に下肢がどくんと脈打つ。
僕の様子をちらりと上目遣いに見るその子に頷くと、その子は少し笑っていったん身を離し、慣れない手つきで僕のズボンのベルトを外した。そして前を寛げて下着をずらすとそこにそっと手を添える。
こんなことをするのは初めてだろうに・・・。
懸命に僕のものをそっと取り出すこの子の姿に、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
初めての時は、僕がいっぱい気持ち良くしてあげたかった。僕が学校の先生だったばかりに、ずっと言葉もかけず、触れもせず、なのに思いだけは伝えてこの子を縛った。本当ならいろいろな人に触れ、恋をして、苦しくも楽しい青春があるはずだった高校生活を、僕は奪ってしまったのだ。それでも卒業したらちゃんと告白して、付き合って、晴れて二人だけの関係を築いていけるはずだった。今まで我慢させてしまった分、いっぱい甘やかして幸せにしてあげたかった。なのに・・・。
こんなことをさせるために待たせたわけじゃないのに・・・。
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