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「今日はいい天気だな」  屋根の上に登ると、いつもなら大小のコンクリートが何層にも連なった瓦礫(がれき)の峰からのびる稜線に垂れこめる、空に浮遊した特殊な金属微粒子のメタリックな(もや)が今日は薄い。久しぶりに顔を覗かせた青い空が輝いて見える。  近くの峰と遠くの山脈とが一つとなって、我が家はすり鉢の底に建っているかのように錯覚させる。  通販で買った特殊合金製の頑強なアンテナポールを片手で掴み、四方へ張り巡らせたテンションの調整を始める。張り詰めた金属に付着した微粒子の肌触りが、手袋を介しても伝わってくると感じられる。  スモッグのように大気中に浮遊した金属微粒子は、健康に影響ないといわれてはいるが、できるだけ吸い込まないよう、効果など期待していない簡易マスクは欠かさない。  屋根の天辺に固定されたアンテナポールは、どんよりとした銀色に輝く空へ向け、瓦礫の稜線を越える高さにまで送受信アンテナを差し出している。  帯電した特殊な金属微粒子は地球の磁場と均衡を保ち、電離層まで上昇して地球を覆い、人工衛星からの電波を遮断している為、昔ながらの地上用アンテナが各戸に備え付けられているというわけだ。
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