わがままを君に捧ぐ

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「ううん。きっと、それが普通の家族なんだと思う。私も仲良くしたいとは思ったのよーーでも、ごめんなさい」 「もう無理に家族に会わなくていい。七菜香と一緒にいることが僕の幸せなんだ」 「でも。翔真さんのご両親が納得しないんじゃーー」 「ちゃんと話をする。だから、もう一度やり直してくれないかな」    そして、私たちはその翌年に結婚した。その二年後には娘も生まれ、万里菜と名前をつけた。義母は私のことを気遣ってくれて、たまにご飯を作りに来てくれた。充分幸せだと思っていた矢先、姉から突然会いたいと電話が来た。気が重かったが、翔真が一度会ってみて嫌だと少しでも思ったら今度こそ縁を切れば良いと強く言った。 「七菜香、あんたのことだからお母さんの携帯電話の番号は消せないだろうなと思ってた。それなら電話くらいしなさいよ。お母さん、いつも心配してたんだよ。え? ぐれてた私が言うなって?」  べらべらとまくし立てる姉に、適当な相槌を打つ。習慣というものは恐ろしい。  姉が六ヶ月になる娘の万里菜をぎこちない手で抱っこする。万里菜がぎゅっと握った姉の指が小さく震えているようにも見えた。
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