わがままを君に捧ぐ

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「ーーうん」  姉がお土産に持ってきた果汁百パーセントのオレンジジュースを冷蔵庫に閉まった。飲んでしまったら、姉を許さねばいけない気がしたからだ。 「美味しそうだね。このジュース。飲む?」 「今、冷蔵庫に入れたばかりよ。ぬるいでしょ」 「うん。あ、お姉さんからさっきの写真来たよ」 「私には来ないけど」 「まあ、いいじゃん。ほら、これなんかいい写真だよ?」  万里菜を抱く私の写真を指さした。 「いつかさ、僕のわがままも聞いてくれる?」 「ーー何?」  本当は聞かなくても分かる。私の家族に皆んなで会いに行く。きっとそんな遠くない日に叶えてあげられるかもしれない。それに今度は何かあったら、逃げてこられる家族がいる。万里菜の柔らかい頬にそっとキスをした。 おわり
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