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怖くて心細い気持ちは怒りにかわって、そのうち涙がぽろぽろ出てきて止まらなくなった。
「小児ぜんそくですね」
救急車に乗ってかけつけた先の病院で、先生は落ち着きはらってそう言った。
ずいぶん前にひどい風邪を引いてから、せきだけがいつまでも残っていたので両親も心配していたのだけれど、どうやらこいつが悪さをしていたらしい。
あれからもう二年がたつけれど、弟はちっともよくならない。
ぜんそくは思っていたよりはるかに重かった。毎日数え切れないほどの薬を飲み、どんなときも吸入器が手放せない。
今年の春、僕の中学入学と同時に待ちに待った小学校デビューをはたしたものの、あまりなじめずにいるようだ。無理もないだろう。あいつは、みんなと走り回って遊ぶことすら許されないのだから。
「すこしでも空気のいいところに――」「主治医の先生が転勤したから――」
そんな理由で引っ越しや転校も何度か繰り返している。
「めいわくかけてるでしょ?」
ふと、今朝の切なげな表情が頭をよぎって、唇をきつくかんだ。
めいわくだなんてそんな。
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