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登古 優莉(とこ ゆうり)は、私立三崎中学校で数少ないオメガ性の男子生徒だ。
穏やかな優しい性格で、人気があった。
小柄で華奢な体つきに、睫毛の長い円らな瞳。
笑みを絶やさない、形の良いリップ。
そんな具合に、見た目も抜群だったので、他校の生徒が見物に来るくらいだ。
ただ彼には今、悩みがあった。
それは、もうすぐバレンタインデーだと言うことだ。
『登古は、誰にチョコレートをやるのか!?』
そんな情報が飛び交っている。
スポーツ万能の今井だ、生徒会長の三木だ、成績優秀の新庄だ。
噂が噂を呼び、デマがデマを呼ぶ。
正直、困惑していた。
「僕は、特別好きな人はいないのに」
はあ、と溜息をつく彼の隣を歩く友人・吉井(よしい)がそれには首を振った。
「ここまで騒ぎが大きくなると、誰かにやらなきゃ収まらないぞ」
「じゃあ、吉井くんにあげようかな」
「冗談。俺、もう他に好きな人いるもんね」
どうしよう、と腕を組んだところで、吉井はある男の名を上げた。
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