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一方……
「ま、マグナス様!!少し…スピードを!」
路地に入るまではふんわりと優しく背中を押して歩いていたマグナスは、路地に入った瞬間にティナの腕を引きかなり速いスピードで走り出した。
案の定ティナは足がもつれてほぼ引きずられる状態に。
「大きな声を出すなよ」
そんなことを言いながらスピードをゆるめてくれないマグナスは、後ろで息を切らせているティナを肩に担いだ。
「ちょ」
「声を出すなと言ったろ」
何をするんだと言いたげのティナに向かって黙っていろと一言。そのままさっきよりも速いスピードで走り出す。
何が起こってるかもわからずただ落とされないようにマグナスの服にしがみついているティナは、視界に映るものを見て状況を察した。
黒い人影が追ってきている。
今2人を追いかけ回す可能性があるのはポセイドン王とマグナスを暗殺しようとする者。そのどちらだろうか。
流石のティナにも追ってくる者に悪意があることが伝わっていた。
明らかな殺気を感じ取ったから。
「しがみついておけよ」
そう言われてティナは腕に力を入れればマグナスは地面を蹴りふわりと浮かび近くの建物の屋根よりも高く飛んだ。
小さな声で飛びすぎたと呟くマグナス。
相変わらず魔力のコントロールはできないようだが逃げるには充分であった。
「見かけないな。俺の暗殺か」
自分を暗殺しようとする者が追いかけてきているのに特に焦る様子もなく、むしろ面倒くさそうに溜め息をついているだけ。
近くの屋根を走り、そのまま広場に降り立った。
「ティナ、多分お前は狙われていないけど人質に取られる可能性があるから、そばから離れナオように」
ストンと地に下ろされてティナは背中にかかるマグナスのコートを握りしめた。
「雑な追跡だな。ただエントまで追ってくるってことは……ライデン王は本気だな」
マグナスの異様な空気を感じ取り広場にいた人々はそそくさと家の中に戻っていった。
2人を追いかけていた謎の男は静かにマグナスの正面に立っている。
「マグナス王子、御命頂戴します」
「はいどうぞ、と言うと思うのか?アドバイスするつもりもないが、真っ向勝負では俺には勝てないぞ」
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