第一王子

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第一王子

魔力とは謂わば生命力のようなもの。 生まれた時に与えられた魔力を、寿命を全うするまでに使う。魔力が尽きる時は死ぬ時と同じである。 魔力は生活を豊かにし、人々は自分の魔力をいかに効率よく使うか考え過ごしている。 魔力が強い者は、闘いに力を使っても魔力は有り余る為、英雄となるために騎士道を歩む。 魔力値によって、人生が変わると言っても過言ではないこの世界に、ある1人の男の子が産まれた。 ライデン王国のジェネラル王の第一夫人の子供。名は【マグナス】と名付けられた。 そんなマグナスを出産の際に取り上げた助産師は。 マグナスは生まれたその瞬間から測定不可能なほどに魔力が強く、出産に立ち会ったほとんどの人は、マグナスの魔力にあてられて体調を悪くし、やがて死に至った。 強すぎる魔力は触れ合えば、相手の魔力を意志とは関係なく吸い込んでしまう。だからマグナスに触れた医者や助産師は魔力を吸われ寿命を縮めた。 誰もが第一王子であるマグナスを恐れ、誕生を祝うことはなかった。『穢れた王子』が誕生したと、マグナスの不名誉な噂が王都で広まった。 そんなマグナスを唯一愛せるのは母親のリリー王妃だった。リリー王妃は魔力が強く、息子のマグナスから魔力を吸い取られても尚、魔力が残っていたのだ。 『可愛いね、マグナス。貴方はとても立派な子になるでしょう』 毎日キスをして毎日抱きしめて、リリー王妃はたった1人でマグナスを育てた。でもそんな日々も長くは続かない。 マグナスに触れるたびにリリー王妃の魔力はマグナスに吸い取られていく。マグナスは母が自分に触れるたびに寿命を縮めていくのが分かっていた。 だけどリリー王妃は、マグナスを愛することを辞めなかった。 『母上……僕に触ってはいけません。母上の魔力がどんどん無くなっている。僕は母上と一緒に居られるだけで幸せなのです。だからお願い……僕に触らないで』 5歳になったマグナスは自分の魔力の大きさも異常さも理解して、母親であるリリー王妃がどれほどまでにマグナスに愛を注いでいるかも理解していた。 『あら、反抗期かしら?触らないでなんて言われると、母さん寂しい』 リリー王妃はマグナスによく似た涼しげな目元を細めて、にこりと笑った。 マグナスはそんなリリー王妃の前で涙を流した。 自分に愛を注ぐたびに短くなる母の寿命。大きな力がありながらも、それをどうすることもできないもどかしさ。 『母上、愛しています。父上の望む子供になれなくてすみません』
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