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「ティナは何か大きな魔力を受けたことはある?」
「魔力を受ける?それは攻撃をされたことがあるかって事ですか?」
ラスウェルは一つの仮説を思いついた。過去に何か大きな魔力を身体に受けて、それが残ってしまっているのではないかと。
「どうでしょうか。ポセイドン王に拷問されていた時とかには……魔力を受けていましたけど」
ティナはそれかな?だなんて首を傾げているが、目の前でラスウェルは固まってしまった。
なんともないような顔をして、あっさりと拷問を受けていたことを吐露した。
おかしなところで強いティナに恐怖さえ感じた。
「拷問…だと?」
「はい。幼い頃ですが、ウィスタリアの瞳を私から取り出せると思っていた頃は、ポセイドン王の拷問は激しかったと思います。ウィスタリアの瞳が所有者を変えられないとわかってからは手荒な真似はされなくなりましたが」
「ま、待って。そんな気なく軽々しく聞いてしまった。ごめん」
女の子に何を言わせているんだと後悔した。
どこか誤解していた。
目の前のティナは、綺麗に着飾られて外にも出れず飼い殺されている。世の中を知らない少女なんだと思っていた。
そんなわけ無いのに。
5歳の頃からポセイドン王に捕われて、父を亡くし、命辛辛逃げた先でジェネラル王に捕らえられた。
そんな捕虜の生活を10年続けたティナが恐ろしい経験をしていない訳がなかったのに。
「大丈夫ですよ。慣れとは恐ろしいもので、苦しくてもアイツは私を殺すことは絶対しないので、耐えれば……終わったので」
「それでも!!!ごめん」
拷問をされていたとサラリと答える女が何処にいる?顔色も変わらなかった。日常的に行われていたことがその一瞬で分かった。
でもティナは自分のされたことで怯えたりはしない。
取り乱した時はいつも、両親のことを思い出した時だった。
自分のことには無頓着。
他人にはとても愛情深い。
成り行きとは言え、同じような考えのマグナスがティナを拾ってよかったとラスウェルは心から思った。
「ラスウェル様はどうして突然魔力の話をされたんですか?もしかして私に何か残っています?」
「いや、俺とマグナス以外の魔力をさっき感じて……だけど勘違いだったみたい」
「そうですか。魔力は……昔は欲しかったけど今は要らないですね」
「マグナスに触れられないからか?」
少しからかった声色でラスウェルはティナに笑いかけた。
「それもあるとは思いますが、マグナス様は魔力を持った私を側には置いてくれないと思うので」
返答が思ったよりも悲しくてラスウェルはそんなつもりで言ったんじゃないのにと心の中で呟いた。
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