第一王子

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マグナスの父であるジェネラル王は、マグナスのことを生まれた時に一目見た以外、一度も視界にさえ入れていない。 マグナスとリリー王妃は大きな敷地の隅にある、古びた離塔に住んでいた。ジェネラル王はマグナスの魔力値が高いことを最初は喜んだが、扱えもしないほどの力で、自分を死に追い込む可能性のある力だとわかり、忌み嫌った。 一度もその腕に抱くこともなく、マグナスは5歳になった。 『何を言ってるの?マグナス。貴方は母さんの大事な息子だよ。私の元に生まれてきてくれてありがとう』 そう言って抱きしめようとしてくるリリーの腕を、マグナスは一歩下がり避けた。 『母上、僕は誰も愛せないのでしょうか』 『マグナス?』 『触れたらみんなの寿命を縮めてしまう。魔力が少ない人は死んでしまう。僕は……母上みたいに愛を与えれる人にはなれないのですか?』 マグナスは震える手を自分で握った。その小さな手は行き場をなくして彷徨っている。 少しずつ魔力のコントロールは出来るようになってきたが、マグナスが魔力を奪おうとしているのではなく、少ない魔力が大きい方へ流れていってしまっているだけ。そこにマグナスの意思はなかった。 『これはもう呪いです。溢れ出る力は呪いなんです。僕のことも周りの人も蝕んでいく。僕はこの力が……憎いです』 マグナスは涙を止めることができなかった。 マグナスには分かっていたから。 母がもうすぐ死んでしまうことを。 自分の寿命を削りながらも、温かい体温をくれる世界で唯一の理解者。 いくら魔力の強いリリーでも、常に一緒にいること、触れ合うことの代償はあまりにも大きかった。 日に日に衰弱していくリリー。 『ごめんねマグナス。母さん……目が見えなくなってきちゃった』 『はい、僕はここにいます、母上』 空中で彷徨うリリーの手を、マグナスは優しく包み込むようにして握った。これが最後のふれ合いだと悟ったから。 マグナスは初めて自分から、大好きな母の手を握った。 『ありがとうマグナス。生まれてきてくれてありがとう。強く生きて』 リリーは力一杯マグナスを抱きしめた。 母として与えてあげられる愛を、最後に全て贈るために。 程なくして、リリーはマグナスの腕の中で冷たくなった。 『うぅ…母上……ううう』 自分という存在が憎らしい。母上の命を奪ったのは紛れもなく僕だから。マグナスはそう言って悔やんだ。 自分が居なければもっと生きられたのに。 愛しているという言葉はマグナスの胸の奥底に沈んだ。何人も無意識で殺してしまい、無意識で残りの寿命を縮めさせてしまうほどの魔力が身体から漏れ出ている。なんて浅ましい。 母の死でマグナスは自分を呪うようになった。
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