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『仔猫のミルクボランティアやらない?』
昔から何かと面倒を持ち込んでくる、幼馴染みのテルからメッセージが届いていた。
仕事に集中して気づかなかった。PCの画面を消して、こめかみをマッサージしながら、片手で[ミルクボランティア]を検索してみる。文字通り、保護された仔猫にミルクを与えるボランティアのようだ。
やらないよ。暇じゃないんだし。
返信を打つと、すぐに既読が付いた。
『ずっと家にいるじゃん』
確かに私はリモートワークでウチにいる。けど、正直仕事の予定をぎっしり入れているので余裕はない。夫の支えでライターとして収入が得られるようになってから5年。ようやく受注が増えて自身を支えられるようになっていた。
断り文句を考える間に、画面はテルからのメッセージでいっぱいに埋まった。
『仔猫の貰い手が見つかったら終わりだから』
私の溜め息と同時に、レンジが温め完了を告げる。
夕食は、昨日のひとりキムチ鍋の残りで作ったおじやの残りだ。冷えた手のひらでも熱で痛くなるので、セーターの袖を引っ張って両手で容器を挟んだ。スライスチーズを乗せたら、できあがり。
『昨日、スーパーの裏で捨て猫が見つかったんだって』
アパートの生垣になっている山茶花には、昨夜の雪が薄らと積もったままだった。
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