僕は…

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僕は…

 僕は、名前ではない。  名前は付いているけど、それはみんなが呼びやすいように、社会で管理しやすいように、加えて親の愛情と期待を表現したものであって、僕は名前ではない。  僕は、立場・役割ではない。  地元の高校に通う高校生、両親の元に次男として生まれた息子、兄から見れば弟というように、場面によって様々に変わるけど、それは周りの環境によって決められていくもので、僕はその立場・役割を担っているだけだ。  僕は、人間だ。  それは間違いない。生きるために食べ、活動し、寝る。時には笑い、怒り、悲しむ。感情に左右されながら、人間社会を営む1人の人間。  ただ、それも広い目で見れば1つの名称に過ぎない。僕らが犬や猫、牛や馬を見て、そう呼んでいるのと一緒だ。  僕は…僕は… 「お前は、何だ?」  黒猫が再度質問した。 「僕は…命です。生命です」  僕は黒猫の目を真っすぐに見つめて、答えた。
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