嫌がらせ

17/20

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「カフェオレがいなくなったら、あなたは今度こそ立ち直れなくなってしまう。こうなったのも全部私のせい。だから探したのよ。隅から隅まで。見つかるまで家には帰らない決意を残して……」 「それでも連絡ぐらい寄越せよ!心配したんだぞ!」 俺は激昂したが妻は常に冷静を保ちながら理由を話した。 「連絡したらあなたは許してくれますか?事情を聞かないで、私をこの家から追い出す。それが怖かった。だから私は………私は………」 妻は今にも涙が流れようとしていた。 それを必死で堪えていたが声の方は既に枯れていた。 俺は話を聞きながら、妻の姿を改めて観察した。 ボロボロの古着を着込み、髪はボサボサ。 眼には黒いくまがはっきりと浮かび上がっており、寝ずにカフェオレを探していたのを物語っていた。 俺は言葉を失った。 久しぶりに妻の姿を見た。 今の今まで気が付かなかった。 見ようともしなかった。 浮気しても尚、俺に再構築をする妻を妻と思わず、疎ましく思っていた。 しかし今は違う。 妻は俺の為にカフェオレを探し回った。 寝ずに猫が居そうな場所を調べ通し、猫アレルギーなのにも関わらず、カフェオレを探し回った。 そう……全ては俺の為だ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加