嫌がらせ

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俺は猫が大好きだ。 猫の本を読んだり、飼いたいと何度も望んだこともあった。 しかし、ある理由で飼うことは諦めていた。 だが、あの喫煙所で女子社員達が猫の話を聞いてるうちに引き取ろうと決心した。 発端は五ヶ月前、その女子社員はいつも会社から帰る途中に通る公園で、お母さんと思しき猫と寄り添う様に隣にいる一匹の子猫を見つけた。 それ以来、彼女は二匹に餌を与え続けていたが今朝、お母さん猫の姿がなく、子猫だけが寂しく鳴いていたそうだ。 彼女はすぐにダンボールに入れて保護したが引き取り手をどうするかで悩んでいた。 『飼いたいけどペット禁止のアパートですし、保健所に連れて行くのも憚るので』 困り果てた女子社員の話を聞いて、俺はすぐに引き取ると言った。 念願の猫を飼えるというのもあるが、もう一つ理由がある。 実は妻は猫が大の苦手だからだ。 幼少の頃に猫に腕を噛まれ、それ以来ずっと猫がトラウマとなってしまったのだ。 将来は猫と暮らしたいと望んでいたが、妻に気遣って飼うことはなかった。 だが今は違う。 書面上は妻だが、俺にとってはもう妻ではない。 遠慮なんかしなくていいんだ。
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