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「はい、秀人。これ飲んで」
詠子に家に誘われたので行ってみたら家に入るなりいきなりビンを渡された。
「何だよこれ」
「いいから飲んでみて」
どう見ても怪しさ満点だったが、まあ詠子のことだ。変なことにはならないだろう。オレは言われるがまま、ちょっと怖かったけど、ビンに入っている液体を一気に飲み干した。まあまあうまかった。
「どう?」
「どうって、これに何が」
そう話している間、オレは体に異変を感じた。オレは……。そこで意識が途切れた。
「気がついた? ごめん、まさか倒れるとは思ってなかったから」
「オレはどうしちゃったんだ?」
「はいこれ」
詠子が鏡を見せてきた。そこに映ってたものを見てオレは絶句した。
「……な、な、何だよこれ!」
何とそこに映ってたのは詠子だった。オレは何がなんだかわからなくなった。
「どういうことだ、何でオレが詠子の姿に? お前オレに何を飲ませたんだ?」
「まあまあ、落ち着いて」
これが落ち着いていられるか!
詠子はコホンと咳払いをして言った。
「あんたに飲ませたの、自分の理想の姿になれる、っていう効果があるの」
「へっ?」
そして少し顔を赤らめて続けた。
「最近少し太っちゃったかもって思って。それでダイエットに効果があるかもしれないと思って試してみたんだけど、予想外の出来事にびっくりよ」
何てものオレに飲ませんだよ。というかいつどうやって作ったんだ。
いろんな疑問がわく中、少し恥ずかしそうにしていた詠子が今度は複雑そうな顔でこちらを見る。いやいや、ちょっと待て。
「おい待てよ。オレは別にお前が理想の姿とかじゃないって。これはあれだ、何かの間違いだって」
まだ納得してないみたいだ。ジトーッとした目で見ている。だからそんな目で見るのやめろって!
「じゃあ何であんたが私の姿になってんのよ」
「そ、それは……。だから」
何でもいいから誤解を解かないと!
「だから、ほら、理想っていってもいろいろあるじゃん。ほら、オレがお前のこと理想の人だと思ってるからとかさ」
そう言うと詠子は顔が真っ赤になった。あれ、オレ必死になって変なこと口走ったか?
「あ、いやそういう意味じゃなくて! えっと」
「いいよ、あんたの気持ちはわかったから」
わかったって何がだ。
さっきまでの複雑な表情は一変、今度はいたずらっぽい目つきになってオレを見る。
そして満面の笑みでこう言った。
「実はそれ、目の前にいる人の姿になるって効能なのよ」
オレは恥ずかしさのあまり速攻で家に帰った。
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