1人が本棚に入れています
本棚に追加
初めは玄関で暮らし、家に入ることを禁じられてられていた猫は、幾度となく家への侵入を許すうちになし崩し的に家猫になっていった。名前も付いた。妹が呼んでいた「うに」というのがいつの間にか名前になった。
うには腹を空かせるとすぐ人に擦り寄ってくる。しかも、餌をあげる人を見極めているのか、母にばかりスリスリしてくるのだ。そのくせ、私にはツンとした態度を取る。こういうツンデレぶりが猫の特徴なんだろうけど、最初のうちは受け入れることができなかった。
「なんて都合のいい動物なんだろう」
嫉妬の入り混じった想いをつぶけどころなく、溜めていく。夏休みの宿題も手に付かなくなり、最終的にギリギリに仕上げるくらいだった。
うにと打ち解けることができたのは、その年の冬休みのことだった。一人で留守番をしていたら、私の部屋にうにがやってきた。いつものように擦り寄ってくるうにを最初は無視していたのだが、あまりに寝ている顔やお腹に擦り寄り、しまいには舐めてきたので、仕方なく餌をあげることにした。頬に残る猫の舌のざらつきを気持ち悪く思いながら、カリカリと呼ぶ固形の餌と缶詰の餌を皿に出す。すると、うには夢中になって食事にありついている。その様子を見ていると、不思議と情が湧いてきた。餌をキレイに食べると、僕のことは気にしていないかのように、炬燵の中へ入ってしまう。私も意地が悪いもので、炬燵布団をめくると丸くなって寝ているうにを見つけることができた。私はその可愛さにメロメロになってしまったのだ。
こうして、猫の魅力に取りつかれてしまった私。このまま、うには我が家のアイドルに収まるかと思いきや……。
最初のコメントを投稿しよう!