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あるドラマの屋外広告がビルの外壁の上で圧倒的な存在感を放っていた。広告の中の俳優や女優たちは生き生きとした表情をしている。  その広告を見上げ足を止める一人の青年がいた。ブレザーの制服にマスク、黒縁の眼鏡と飾り気のない恰好をしている。しかし、眼鏡の奥に覗く瞳は涼し気で、スラリとした高身長からは隠しきれないオーラが漂っていた。    青年の近くで大学生くらいの女たちが足を止め、屋外広告を指差し話し始める。 「あ、見て。あれだよ、ツイッターの写真」 「ほんとだー。やっぱり雪平景(ゆきひらけい)、かっこいいねー」  二人は嬉しそうに広告をスマホで撮影している。少し離れたところで、青年はそのやりとりを聞いていた。 「子役のときは可愛い感じだったけど、めっちゃかっこよくなったよね」 「分かる。この前のドラマのあの役が好きすぎて、私、何回も見たもん。特に景くんが主人公に───」  青年はもう一度、屋外広告に目をやる。広告の中央にいる男が雪平景だ。世間に溶け込んでいる自分を街中で見るというのは、いつまで経っても慣れないことで不思議な感覚だ。景は二人組の話を聞き終わらないうちに、緩慢な動きでその場を立ち去った。
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