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景も彩斗に続き、ふれあいルームに入った。
カラフルなタイルマットが敷き詰められた床、天井に届きそうなキャットタワー、壁面にはキャットウォーク。部屋の端にはソファーや小ぶりなテーブルが置かれている。和やかな空間の中で猫たちは各々自由気ままに過ごしていた。
景はいつものように掃除用具入れからカーペットローラーを取り出し、床やソファーを掃除し始める。彩斗は水飲み器のボトルを交換しながら言った。
「俺たちも、もう高三じゃん。景は進路どうすんの?」
「進路……」
「どうした?」
「実はさ、まだ、これ誰にも言ってないんだけど、俺、高校卒業したら大学行きたいなって思ってて」
「へー、いいじゃん。男子高校生俳優から男子大学生俳優か。いやー、これはますます売れますよ」
「いや、そうじゃない。大学に行ったら芸能活動は休止しようと思ってる」
「え、何それガチ? 大スクープじゃん。ちょっと俺、週刊文秋にタレこみしてくるわ。んでもって、謝礼金たんまり貰っていろなみの運営費にしてやる」
彩斗はボトル交換を放置してふれあいルームを出て行こうとした。景はすぐさま首根っこを掴み彩斗を引き止める。
「おい、待てこら。10年来の幼馴染を裏切るつもりか」
「だって、うちの運営カツカツなの景も知ってるでしょ?」
「そりゃ、知ってるけど……」
「じゃあ」
彩斗はポケットからスマホをスッと取り出し、ニヤリと笑う。
「いや、ダメなものはダメだって、言ってんだろうがっ!」
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