4/5
前へ
/11ページ
次へ
 景は彩斗の手からスマホを奪おうとした。が、思いのほかスマホを握る力は強く、なかなか奪うことができない。彩斗は歯を食いしばっている。意地でもスマホを離さないつもりらしい。  仕方がない。景は最終手段に出ることにした。掴んでいた片手を自由にする。親指と人差し指で輪を作り、彩斗の額の前に手をかざした。彩斗はしまったという表情で攻撃を避けようとしたが、遅かった。  指が弾かれ、景の必殺奥義・デコピンが炸裂する。スマホが落下し彩斗はその場にうずくまった。 「いっっつ……暴力反対!」 「頭をかち割られたくないなら、スマホを大人しく渡せ」 「はいはい」 「よろしい」 「景ってば、本当、テレビの中とリアルの性格違うよな。二重人格かと思う。爽やかイケメンの欠片もないわ。ていうか、最初から文秋に流そうなんて思ってないから。冗談だよ、そんなマジになるなって」 「お前の冗談は趣味が悪いんだよ」  景は彩斗を睨みつけた。 「で、なんで大学行きたいの?」 「幼馴染を売ろうとしたお前に教えてやる義理はない」 「はいはい。すみませんでした。俺が悪いです。お許しくださいませ、神様、仏様、雪平景様」  彩斗は手を合わせて拝んだ。景は呆れたようにため息を吐き、そっけなく呟く。 「……大学で色々なことを学んで見聞を広げたいんだ」 「なるほどねぇー。いいじゃん。景も真面目に進路について考えてんだな。でも、活動休止しなくてもいいんじゃないの? 大学生って時間あるって言うしさ」 「それは……」  景は口ごもった。脳裏に母の姿がちらつく。これ以上、深掘りしてほしくなくて彩斗に同じ話題を投げかけた。 「彩斗はどうするの?」 「んー俺? とりあえず保護猫カフェの運営を続けるつもりだよ。でも、獣医とか動物看護士とかの資格持っていたら、役に立ちそうだし進学も捨てがたいな。あ、そうだ、景に見てほしい子がいるんだった」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加