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 彩斗はそう言うとふれあいルームを出て、バックヤードである別室に景を案内した。ケージの中に入った猫たちの前を通り過ぎる。バックヤードにいる猫たちはカフェデビュー前の猫たちだ。薄暗い部屋の奥に手招きされる。   彩斗はテーブルの上に置かれた段ボールを指差した。景は段ボールの中を覗き込む。そこには数枚のタオルに包まれた4匹の子猫がいた。子猫たちは愛らしい声で鳴き声を上げている。 「か、可愛い……」 「だろ?」  彩斗は歯を見せて笑った。 「でも、どうしたんだよ、まだ随分と小さいじゃないか」 「それがさ。ちょっと前にうちの前に置き去りにされててね。そのままにしておくわけにいかないから、保護したんだ。拾ったときは目が開いてなかったから、まだ、生まれたばっかりだと思う」  そう言って彩斗は子猫の一匹を手に取った。子猫は手に収まってしまうほど小さい。 「でも、良かったよ。見つけたとき、すっごい衰弱してて死んじゃうんじゃないかと思ったから。今ではすっかり元気。景も触ってみる?」 「いいのか?」 「遠慮なくどうぞ。子猫を触れる機会なんてめったにないからな。感謝しろよ」 「ありがとう」 そっと掬い上げるように子猫を両手で包み込む。小さくて軽い。キジトラ柄の毛並みから温もりを感じる。まるでぬいぐるみのようだ。灰色がかった青い瞳はつぶらでガラス玉のように澄んでいた。心が浄化されていくのを感じる。猫という生き物はどうしてこんなにも尊いのだろうか。 「名前はついてるのか?」 「ううん、まだだよ。そうだ。景がこの子に名前付けてよ」 「え、いきなり言われても」 「いーから、いーから」 「うーん、そうだな……タマはどうかな」 「ネーミングセンスなさすぎっ! ま、いいんじゃない?」 「うるさいな。せっかく付けてやったのに。タマに失礼だろ」
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