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 あれから三か月が経った。季節は夏を迎え、うだるような暑い日が続いている。ドラマの撮影や番宣のためのバラエティー番組の出演、雑誌の取材などに追われ景は何かと慌ただしい日々を過ごしていた。  帰り道の途中で、ため込んでいた息をもらす。暑さのせいか、食欲が湧かず体力が落ちていた。それに注意散漫も酷い。今日のドラマ撮影では、ミスを連発してしまい共演者やスタッフにたくさんの迷惑をかけてしまった。  終わってしまったことを悔やんでも仕方がない。帰宅したら気持ちを切り替えていこう。そう思いながら、景は足をひきずるようにして歩いた。  夕食を買うために食料品店に足を向ける。景はインスタント麺のコーナーに向かい、棚からインスタント麺を何個か手に取りカゴに入れていった。あとは、冷凍パスタでも買おうか。そう思い、歩き出したときだった。 「景?」  振り返ると、彩斗が立っていた。 「やっぱ、そうだ。なんか久しぶりじゃん。ていうか、お前なんか痩せた?」 「そうかな」     彩斗はカゴの中を覗き込んで、眉根を寄せる。 「カップ麺ばっかりじゃん。栄養バランス偏るぞ。そうだ、うちに食べに来いよ。母さんがカレー作りすぎて、最近の夕食が毎日カレーなんだよ。さすがに飽きてきたからさ」 「でも、いきなり行ったら迷惑じゃないか」 「何言ってんだよ。そんなの今更だろ?」 「確かに」 *  色波家までの道を二人並んで歩く。辺りには薄闇が広がり始め、ようやく暑さが和らいできた。遠くからヒグラシの鳴く声が聞こえる。 「いやー、今日は大変だったよ。模試受けてみたんだけど、難しくて全然解けなくてさ。景は模試とか受けてる?」 「いや、俺は受けてないよ」 「え、マジかよ!? だって大学行くんだろ」 「あーその話なんだけど、やっぱり俺は行かなくていいかなーって思って」 「なんでだよ。この前、あんなに希望に満ちた目で夢を語ってたのに」 「うん。あれから色々考えたんだけど、俺、彩斗みたいに頭良くないしさ。それに、役者としての仕事も楽しいから、行かなくてもいいかなって」  役者の仕事が楽しいのは本心だ。だけど、なぜだろう。持ち上げた頬がひきつっている気がする。心の底に澱が溜まっていくのを感じた。
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