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夕食をご馳走になり掃除を終えた頃には、21時を回っていた。景は彩斗に声をかける。
「そろそろ帰る」
「おう、いつもありがと。気を付けて帰れよ」
景はソファーの上に置いた鞄を取りに行く。しかし、ソファーの上の鞄はキジトラ柄の猫によって陣取られていた。景は彩斗と顔を合わせる。彩斗は察したように、キジトラ柄の猫をひょいと持ち上げソファーの隅に移動させた。
猫を移動したことで鞄が横になってしまい、中身が床に零れ落ちた。スケジュール帳、モバイルバッテリー、ドラマの台本、飲みかけのペットボトル、ペンケース、たくさんの付箋が付いた英単語帳、大学のパンフレット。景は床に落ちたものをひとつひとつ拾い上げて鞄の中に戻していく。すかさず彩斗も落ちたものを拾いに行く。彩斗はたくさんの付箋がついた英単語帳を手に取り呟いた。
「めっちゃ勉強してるじゃん」
「そんなことないって。定期テスト対策で勉強してただけだよ」
「定期テストでこんなに勉強するのか。真面目かよ」
「別にこのくらい普通だろ」
「へーそうなんだ」
彩斗は景をいぶかしむような目で見つめる。
「何だよ」
「別に。真面目だなって思って」
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